救急加算の4倍・6倍の特例を「持ち回り」で決定

日比谷公園_2021年3月23日

 厚生労働省は8月26日(木)、中央社会保険医療協議会(中医協)の第487回総会を「持ち回り」の形式で開催し、「新型コロナウイルス感染症を踏まえた診療に係る特例的な対応(案)」について承認を得たと発表した。同日午後7時半から報道関係者らを対象にしたブリーフィングで特例の内容などを伝えた。【新井裕充】

 今回の特例では、これまでの臨時特例で救急医療管理加算の3倍(2,850点)としていた評価を4倍(3,800点)に引き上げるとともに、呼吸不全管理を要する患者(中等症Ⅱ)以上の評価を5倍(4,750点)から6倍(5,700点)に引き上げる。

 質疑では、「昨日の総会で提案せず、総会をきょう持ち回りで開いたのはタイミングの問題か」「コロナ特例のその他の点数も今後同様な手続きで行われるのか」などの質問があった。

 厚労省の担当者は「今回は予算措置を伴う対応」とし、「予算措置の可否については財政当局との調整が続いており、昨日の総会には間に合わず、本日、持ち回りということで開催をさせていただいた」と説明した。

 前日の25日(水)、厚労省は午前9時から10時過ぎまで保険医療材料専門部会をオンライン形式で開催。その後、午後1時近くまで約2時間半にわたり総会を開いたが、特例対応の内容は議題に挙がらなかった。

 今回の持ち回り開催について、公益委員から「こうした重要案件について中央社会保険医療協議会を持ち回りで開催する点などについて疑問が残る」との意見が出ている。

 記者ブリーフィングの模様は以下のとおり。

〇厚労省保険局医療課・荻田洋介課長補佐
 遅い時間にすいません。保険局の医療課です。本日、中医協総会について「持ち回り開催」という形で、1つの案件について開催をさせていただきましたので、その記者ブリーフィングをさせていただきたいと思います。

 ホームページ上に、本日の持ち回りにあたっての説明資料と、それから持ち回り開催の「採決の結果について」という2つがアップされているかと思いますので、その2つをお手元に置いていただきながら、

 本日は平場での YouTube 配信してませんので、まず参考資料のほうを簡単にご説明をさせていただき、その後、質疑のほうをさせていただきたいと思います。

【説明】「特例的な対応(案)」等について


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〇厚労省保険局医療課・金光一瑛課長補佐
 では、お手元、「総-1」をご準備ください。「新型コロナウイルス感染症への対応とその影響等を踏まえた診療報酬上の取扱いについて」の資料です。
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 2ページ目。まず、新型コロナウイルス感染症の発生状況について、ホームページ等でも、これまで公開をしているものになりますが、直近のものまでのアップデートを載せております。
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 4ページで、国内発生動向、速報値。いわゆる第5波の様子が分かる資料になっております。
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 あわせて5ページ。重症者の推移。
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 6ページには、陽性者数と死亡者数、年齢階級別に分けているものになります。
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 7ページが重症者割合について。これも同様に、年齢階級別に分けております。
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 8ページ。これは、これまで中医協の資料としてはお出しをしておりませんでしたが、年齢階級別の新規陽性者数の推移。また、その構成割合の推移という形でまとめております。

 直近8月まで、またここ1カ月については週で分けておりますが、60代以上の数というのが非常に減ってきているトレンドの中で、30代以下についてはかなり増加が見られるということになるかと思います。
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 9ページ以降、「今般の対応について」ということで、まとめております。
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 前回、中医協でご議論いただいた際、特例のご議論をいただいた際、「新型コロナウイルス感染症診療の手引き」第3版を使って、ご議論をした経緯がございました。

 今般、直近のもの、7月30日発行の「第5.2版」というふうになっておりますので、そちらの比較の中で、変化というものを少し、お示しをしております。

 10ページの「病原体・疫学」ということについては、こちら下線を引いておりますが、変異株、アルファ株から始まって、最近のカッパ株というところまでありますよということのご紹介になります。
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 11ページです。「臨床像」の部分の抜粋であります。

 第3版の時には、

  ・ 重症化のリスク因子、および、
  ・ その重症化のリスク因子かは知見が揃っていないが要注意な基礎疾患等

 ということでまとまっておった。

 また、いくつか重症化マーカーとして有用な可能性があるものの列挙があった。

 今般の「5.2版」においては、重症化のリスク因子として列挙されているもの、かなりエビデンスとともに増えていると。

 さらには、臨床判断の一部として活用できる重症化を予測するマーカーについて、例えば、「インターフェロンラムダ3」であるとか「TARC」、こういったものも増えながら、臨床判断の一助とできるというところで変化が見られるところであります。
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 12ページは、重症度分類とマネジメント。これも、重症度分類、3版の時には酸素飽和度、臨床状態、診療のポイントということでまとまっていたところ、
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新型コロナウイルス感染症COVID-19診療の手引き 第5_ページ_35
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 今般では、右側、図の「4-1」というふうに書いておりますが、分類、「軽症」「中等症Ⅰ」「中等症Ⅱ」「重症」という別は変わりませんが、各種の治療法、特に新しい医薬品について、多く記載がされております。

 「重症度は発症からの日数、重症化リスク因子、合併症などを考慮して、繰り返し評価を行うことが重要である」といった記載。かなり重厚になっている。
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 13ページもあわせてご覧いただければ、各医薬品、その内容、また投与時の注意点といったことも記載がされているところであります。
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 14ページ。「新型コロナウイルス感染症に係る診療の変化について」ということで、
診療に携わる医療機関の医師にヒアリングを行った結果というものをまとめています。

 「昨年秋頃までと比較して、直近の新型コロナウイルス感染症の診療では、以下のような変化が生じている」とのことでありました。

 1つ目の「患者像」。こちらは、先ほどの資料8ページでも触れましたが、「患者がより若年となり」というところで書き出しております。

 人工呼吸器やECMOを使用するほどの重症患者よりも、相対的に高用量酸素や非侵襲性換気などを使用している患者が多くなっている。こういった患者のARDS、急性呼吸窮迫症候群の病態は遷延する傾向がみられる。

 中等症でも酸素化が悪いような重篤な患者が多く、より医療的に酸素化の状況や身体所見などをよく観察する必要がある。

 また、若年であるために、「一方」みたいなところでありますが、高齢者と比較して早期に回復することも多く、そうすると、入院が短期間で終了し、病床の回転率が上昇しますので、いわゆる入院初期に要する手間というところは全体で見ると増加している。

 というふうにヒアリングで得られました。

 「患者の受入れ」という点については、中等症を受入れた後に重症化しても、重症になった患者さんは引き続きその医療機関で診療する必要があると。

 そういうことを考えると、中等症で引き受けるとなった際には、重症化はある程度、見越して管理を続ける必要があるという点も、これまでの入院の患者さんの受入れという点と異なっています。

 そういったお声でありました。
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 そういった内容を踏まえ、15ページ、まとめております。特例的な対応案と。

  新型コロナウイルス感染症に関する
  新たな知見が明らかとなっていることや、
  新型コロナウイルス感染症の診療における感染患者の年齢構成の変化、
  診療に係る人材のさらなる確保の必要性、
  こういったことも踏まえて、
  感染が急速に拡大している間、以下の対応をすることとしてはどうか。

 としております。

 2つの丸。これ、ここまで縷々申し述べた内容についてまとめています。

 以下のような変化ということで、

  ・ 弱年齢層へのシフト。
  ・ より多くの重症化のリスク因子が明らかとなっている。
  ・ 新たな知見に基づく医薬品の使用が進んでいる。

 これらの変化を踏まえ、診療の必要性の変化ということで、

 患者像の変化に対応するため、多職種連携を含むより手厚い体制に係る医療従事者のさらなる確保が必要であること。

 病態を踏まえた迅速な治療方針の決定ですとか、重症化に備えて重点的な観察・頻回の検査等が必要であること。

 血液検査で重症化マーカーを検索・フォローし、より重篤な状況への移行を見極める必要。

 こういったことを踏まえて2つ、矢印で書いてございます。

 入院加療を実施している患者の診療に係る評価を、現行3倍としているものについて4倍に引き上げる。2,850点を3,800点に引き上げるということになります。

 また、呼吸不全管理を要する患者、これは中等症Ⅱ以上の患者になりますが、中等症Ⅱ以上の患者の診療に係る評価を5倍から6倍に引き上げる。現行4,750点という形で加算を付けているものを5,700点に引き上げるということで対応させていただきたい。

 というふうな資料になっております。
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〇厚労省保険局医療課・荻田洋介課長補佐
 はい。この資料のほうをお示しさせていただきまして、各委員の皆様方に持ち回りの手続きにより承認の可否について照会をさせていただいた結果として、「採決の結果」と書いております。

 ホームページ上、経過を見ていただければと思いますけれども、「採決の結果は、以下のとおりとなった」ということでございまして、

 今回の措置について、「中央社会保険医療協議会として承認する。」ということで、承認されたということに相成ってございます。

 その下、ご覧いただきますと、「委員からのご意見」ということで、各号の委員の皆様方から、今回の措置に関するご意見、それから検証を求めるご意見、それから、もう少し広くコロナ対策のあり方、またはその意思決定に関するご意見、そういったものを頂きつつ、

 繰り返しになりますけれども、事務局の提案に対しては承認するということで承認を頂いたというのが今回の持ち回り開催の顛末ということでございます。

【質疑】「特例的な対応(案)」等について

〇厚労省保険局医療課・荻田洋介課長補佐
 事務局からの説明はいったん以上でございますので、ご質問等ありましたら、お願いいたします。

 ▼ 質問はチャットで受け付けた。以下、質問部分はチャット画面のコピペ。

Q1.コンサル会社社員
 見直しは【救急医療管理加算】の倍率のみでしょうか? 二類感染症患者入院診療加算などは、従前どおりでしょうか?
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〇厚労省保険局医療課・金光一瑛課長補佐
 おっしゃるとおりであります。
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Q2.業界誌記者
 対象患者について伺います。「入院加療を実施している患者」の注の文言をみると、(中和抗体薬の部分を除き、)特例措置(その19)の中等症の定義と同じだと思うのですが、現在3倍の対象となる患者はすべて4倍の対象となるということでよろしいでしょうか。

 また、中等症Ⅱ以上ということは、現在5倍の対象となる患者はすべて6倍が算定できるということでよろしいでしょうか。
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〇厚労省保険局医療課・金光一瑛課長補佐
 はい。ご指摘のとおりであります。
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Q3.通信社記者
 少し重なりますが、6倍になる対象の「中等症Ⅱ以上」には、重症者は含まれないという理解で良いですか。
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〇厚労省保険局医療課・金光一瑛課長補佐
 これはですね、「含まれる」という理解で結構です。

 ただ、いわゆる重症者については ICUやHCUに入っている場合、ございます。

 その場合には、この救急医療管理加算を算定するのではなく、特定集中治療室管理料でありますとか、ハイケアユニット入院医療管理料、こちらが3倍になるという取扱いになっておりますので、そちらで対応いただくということになります。
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Q4.ネットニュース記者
 入院加療を実施している患者は、必ずしも中等症Ⅰに達していなくても4倍算定可能、と理解すればいいでしょうか。
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〇厚労省保険局医療課・金光一瑛課長補佐
 こちらについては、おっしゃるとおりです。

 入院加療を実施して患者さんのリスクを鑑みて入院加療ということになっておりますので、4倍算定可能で結構です。
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Q5.ネットニュース記者
 昨日の総会で提案せず、総会をきょう持ち回りで開いたのはタイミングの問題ですか。
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〇厚労省保険局医療課・荻田洋介課長補佐
 少々まどろっこしくて恐縮ですけれども、ご質問の通りでございまして、今回の措置、予算措置を伴う対応となってございます。

 予算措置の可否については財政当局との調整が続いておりまして、本日の午前中にそちらは整いましたので、それを踏まえての対応ということで昨日の総会には間に合わず、本日、持ち回りということで開催をさせていただいたということでございます。
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Q6.業界誌記者
 自宅宿泊療養から医療機関に搬送される事例が増えている中で、P15の報酬増額の理由の1つの、患者像の変化に対応するための多職種連携等は、どのような場面を想定したものですか。
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〇厚労省保険局医療課・金光一瑛課長補佐
 これは患者像の変化、先ほども例えば、11ページから始まって12ページで説明をさせていただきました。
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 患者さんの重症度等については、例えば発症からの日数やリスク因子、合併症などを考慮して繰り返し評価を行っていただかなきゃいけないということ。

 また、そのヒアリングの結果でもお示しをしましたが、若年層、悪くなって遷延する、長引く方と、ある意味、良くなって回転していく。

 そうすると、お家に帰るということにもなるわけですけれども、そういった入院の過程においては必ずしも医師だけじゃなくて看護師さんであるとか、その他の職種というものの連携は必須になってくる。

 そういう意味で、入院治療の一般的な考え方として「多職種連携を含むより手厚い体制」というふうに、ご紹介をしているところになります。
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Q7.コンサル会社社員
 適用はいつからになるのでしょうか?
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Q8.業界紙記者
 財源は予備費を活用すると言うことでよろしいでしょうか。また所要額はいくらになりますか。本日から新しい点数を算定可能になるということでよろしいですか。
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〇厚労省保険局医療課・荻田洋介課長補佐
 財源に関しては、予備費の活用ということでございます。予備費を使うということについて本日、財務省のほうと大臣合意をしているということでございます。

 所要額については国費で20億円程度ということでございます。

 それから、予備費について大臣合意はしていますけれども、実際は閣議決定が必要になります。閣議決定をしてからの算定可能ということになるわけですけれども、閣議決定については順調にいけば明日ということになるんではないかというふうに考えています。
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Q9.NHK記者
 引き上げの3800点、5700点を金額にするとそれぞれいくらになるでしょうか? また、前回、3倍、5倍にそれぞれ引き上げたのはいつでしょうか?
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〇厚労省保険局医療課・金光一瑛課長補佐
 1点10円ですので、3,800点は3万8,000円。5,700点は5万7,000円になります。

 前回、3倍、5倍に引き上げたのは令和2年の9月15日からということで発令しております。

 申し訳ありません。5倍が9月の15日。3倍が令和2年5月の26日です。
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〇厚労省保険局医療課・荻田洋介課長補佐
 ほかはいかがでしょうか。
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Q10.業界誌記者
 明日閣議決定されれば、明日に事務連絡を出し、同日適用ということでしょうか。
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〇厚労省保険局医療課・荻田洋介課長補佐
 閣議決定自体はされるかどうか、というのはありますけれども、されれば、速やかに明日中に事務連絡を出して同日適用ということで事務的には進めたいというふうに思います。
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Q11.NHK記者
 5倍引き上げの方の時期をもう一度教えて下さい。
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〇厚労省保険局医療課・金光一瑛課長補佐
 令和2年9月の15日になります。
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Q11.団体職員
 コロナ特例のその他の点数も今後同様な手続きで行われえますか?
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〇厚労省保険局医療課・荻田洋介課長補佐
 今後どういう対応が必要かっていうことは感染状況、その他の状況というものをしっかり見させていただいてということだと思いますので、あるかないかっていうことは予断をもってお答えするのは難しいかなというふうに思います。

 もし必要で、やるとなった場合に予算を伴う措置が必要であれば、今回のような予備費を確保した上で、

 中医協自体が持ち回りになるのか総会になるのかっていうことはあるかと思いますけれども、必要な議論をいただいた上で措置をするということは、可能性としてはあるのかなあというふうに思います。
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〇厚労省保険局医療課・荻田洋介課長補佐
 よろしいでしょうか。それでは、ブリーフィングのほうを終わらせていただきたいと思います。

 連日の開催になりまして、また遅い時間がブリーフィングになりまして失礼いたしました。どうもありがとうございました。

 (配信終了)

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