大病院に行くのは「交通違反」、定額負担は「罰金」か

20200312_医療保険部会

 軽症患者らが大病院をいきなり受診することを抑制しようという動きが強まっている。紹介状なして大病院を受診した場合に徴収される病院の範囲をさらに広げるかについて議論した厚生労働省の会議で、交通違反の罰金を例に挙げる発言があった。その委員は「集中してみんなが大病院に行くことは決してプラスではないことをしっかり啓発しなければいけない」と訴えた。(新井裕充)

 厚労省は3月12日、社会保障審議会(社保審)医療保険部会(部会長=遠藤久夫・国立社会保障・人口問題研究所所長)の第126回会合を開き、「大病院への患者集中を防ぎかかりつけ医機能の強化を図るための定額負担の拡大について」と題する資料を示した。

 資料のタイトルには、「大病院への患者集中を防ぎ」「かかりつけ医機能の強化を図る」という目的が記されている。また、これまでのように「大病院受診時の定額負担」とはせず、単に「定額負担」としている。

 厚労省担当者の説明は、http://chuikyo.news/20200312-teigaku/をご覧いただきたい。

 質疑で、経済界を代表する立場の委員は、大病院の役割を「高度な診療」とし、外来医療については「専門外来」「紹介患者」に制限する必要性を指摘した。

 この発言に続けて、別の委員が「交通違反で罰金を高くしても事故が減らない。ドライバーがちゃんと意識をして、ちゃんとマナーを気をつけて運転するしかない」と啓発の必要性を主張。「民主政治はその国民の民度やレベルに応じる」と語気を強め、「企画記事でも結構だし、政府・厚労省広報などで良識みたいな理解をしっかり根付かせていかないと無理だ」などと述べた。

〇遠藤久夫部会長(国立社会保障・人口問題研究所所長)
 (前略) それでは井上参考人、お願いします。
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〇井上隆参考人(日本経済団体連合会常務理事)
 はい、ありがとうございます。経団連の井上でございます。
 
 限られた医療資源を有効に活用をしていくためには、まずは、ほかの委員からのご指摘もありましたけど、まず外来機能の明確化というものが不可欠だというふうに思います。
 
 大病院におきましては高度な診療を中心とする役割ですから、外来につきましては、専門外来でありますとか、紹介者、紹介の患者に集中していくと。
 
 診療所は、地域に根ざして相談場所になると。かかりつけ医としての外来機能を発揮するということが重要だと思います。
 
 医療部会ということですので、そちらでも、その方向でしっかり検討していただきたいと思いますし。
 
 かかりつけ医に関しては、まだまだ、やはり啓発が必要だと思います。
 
 一般の方はまだまだ普及してない考えのように思いますので、そこの策も一緒に考えていく必要があると思います。
 
 その上で、この仕組みを担保するということで、全世代型社会保障検討会議の中間報告で指摘されたような大病院の外来受診時の定額負担の大幅な拡充を着実に実施していくという必要があると思います。
 
 対象につきましては、資料「1─2」の7ページで赤く示された688の「その他」という所になりますけれども、
.

. 
 今、ご指摘のありましたように、地域ごとの状況で、これは緩和していくことはもちろん重要だと思いますけれども、
 
 まあその、あまりこう、例外を拡大していくということのないようにやっていくべきだなというふうに思います。
 
 また、定額負担の増額につきましても、保険財政のその持続可能性ということを考えながら、それに寄与するような水準の増額とすべきというふうに考えております。以上でございます。
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〇遠藤久夫部会長(国立社会保障・人口問題研究所所長)
 ありがとうございました。ほかに。 
 はい、お待たせしました。それでは、横尾委員、どうぞ。
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〇横尾俊彦委員(全国後期高齢者医療広域連合協議会会長、多久市長)
 はい、ありがとうございます。大きく2つ、意見を言わせていただきます。
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 1つ目は細かいことなんですけども、「1─1」の資料の7ページをご覧いただきたいんですけど。
 
 私、この図の見方として、真ん中にある「連携」っていうのが片方を向いてる矢印なんですね。
 
 普通、こういうチャートで示す場合は、委託か委任か発注か発信か通達がこの矢印なんです。
 
 で、連携の場合は、通常われわれ考えるのは両方にちゃんと向き合って、お互い、双方やるという連携。
 
 あるいは、ニアイコールに近いような表示のほうが分かりやすいと思うんですね。
 
 これ、「一部改変」って、右上に小さく書かれてて、いずれ国民の皆さん見るんですけども、
 
 その際に、私が今言ったような違和感を持つ人は結構いると思いますので、ぜひ改めたほうがいいと思います。
 
 そうなると、じゃ、右側にある縦の両矢印は何かってことになりますので、
 
 これは協議なのか何なのか、括弧の中に書いたほうがいいと思います。
 
 さらに、ついでに言いますと、
 
 左側に「専門的かつ集中的に検討することを決定」と書いて、破線の点々の矢印なんですね。
 
 右側は報告の点々。なんで破線なんだろうと。直線で書けばいいのにと。
 
 これは、左側の表現が、決まって、
 
 上が決めて、それを検討会に任せるような、なんかそういう趣旨で書いたほうが、なんか余分な推測や誤解を招かないし、
 
 説明不足で、なんか分かったような分からないような状況で行くよりは、より明確に書かれたほうがいいんじゃないかなあっていうのが第一印象として持っていますので、もし意見があったら教えてください。
.

.
 2点目、意見ですけども、このテーマは改革工程表、ページ4に書いてあるように、
 
 また具体的な、ページ2にあるように要旨で書かれてますけど、
 
 社会保障審議会でしっかり議論して、それらを踏まえながら夏に成案を得るになってます。
 
 大きな目的は2つで、1つは大病院の集中を防ぐこと。
 
 もう1つが、かかりつけ医の機能強化ということがタイトルにもあるように出ているんですが、
 
 非常に荒っぽい言い方をしますが、この、料金を上げることによって、「そこに行くのをちょっと控えてよ」っていう言い方に、今、なってるんですね。
 
 これ、たとえ悪いんですが、例えば、交通事故。
 
 交通違反で、罰金、高くすると、じゃあ、事故が減るかって言うと、減らないんですね。
 
 何が大事かって言うと、ドライバーがちゃんと意識をして、ちゃんとマナーを気をつけて、
 
 気をつけて運転するしかないと思うんですね。
 
 同じように、ちょっと、たとえが全然良くなかったかもしれませんが、
 
 このことについては、やっぱり、「集中してみんなが大病院に行くことは決してプラスじゃないよ」っていうことをしっかり啓発しなきゃいけないと思うんです。
 
 以前にも同じ意見、言ってますが。
 
 たとえて言うと、民主政治でよく言われますが、われわれが持っている民主政治はその国民の民度や、そのレベルに応じるものしか持てないっていうのが過去の有名な政治家や識者の発言で残ってますけど、
 
 これも、急ぐと、こういう、お金とか制度でやりたがってしまうんですが、われわれはついつい。
 
 しかし一方で、本格的に直すんであるならば、やっぱり良識を涵養する、育成するってこともしなきゃいけないと思いますので、
 
 もし可能であるならば、経済財政諮問会議に厚労省から、この4ページについては追加して、そういう、ちょっと本論のことをですね、入れていただいてですね、それをしない限り変わらないってこと、言ってもらったほうがいいと思います。
 
 それがたぶん無理かなってことになるとですね、やっぱりここはメディアへの協力を求めたり、企画記事でも結構ですし、政府広報、厚労省広報でも結構なんですが、やっぱり政府の広報手段で、かかりつけ医を持たないとデメリットになること、持つことによるメリット。
 
 そして大病院へ集中するとトリアージで重篤な方が先にリスクが高くなってしまうから、いつもいつもそっち行かないで、皆さん、お互いに協力していきましょうという良識みたいな理解をですね、しっかりこう、根付かせていかないと、たぶん無理だと思うんですね。
 
 仮に、病気になった場合、患者の立場で考えると、それは5,000円、1万円高くたって、そっち行きますよ、たぶん。行きたいほうに行っちゃう。
 
 でも、その時に軽度であるならば、自分がいつもかかってる、かかりつけのお医者さんのほうが時間融通も利くし、細かい説明も聞けるし、っていうことで言っていただくとか、何か分かりやすいことも含めた、ぜひ啓発、広報をぜひしていただきたいと思ってます。
 
 そのことによって理解が向上していくことが、やっぱりこれが本当に、こう、変わっていくことじゃないかなあーという印象を、当初から拭えておりませんので、ぜひよろしくお願いしたいと思います。もし、ご意見あったら聞かせていただくとありがたいです。
.
〇遠藤久夫部会長(国立社会保障・人口問題研究所所長)
 事務局、何かコメントありますか?
.
〇厚労省保険局保険課・姫野泰啓課長
 医療部会における検討の方向性の所でも、少しお示ししてございますけれども、
.

.
 例えば、資料の「1─1」の8ページ目でございますけれども、
 
 横尾委員、おっしゃるとおり、議論の観点といたしましては「外来機能の明確化」、そして「かかりつけ医機能の強化」、そして③にありますように、「国民の理解の推進」、
 
 こういったものが3つ合わさってですね、推進していくべきというところは医療部会においても認識されていると思いますので、
 
 そういったことを踏まえて、医療保険部会においても議論するし、
 
 また、連携についてのご指摘、また、考えたいと思いますけれども、
 
 そういった意味では、医療部会と医療保険部会と、一歩通行ではなくてですね、両方、議論を見ながらですね、検討を進めていくということかと思ってございます。
 
 資料については、また検討させていただきたいと思います。検討したいと思います。
.
〇遠藤久夫部会長(国立社会保障・人口問題研究所所長) 
 はい、かかりつけ医療、機能につきましては、かかりつけ機能につきましては、この医療部会およびその下の検討会で基本的な、重要なアジェンダとして議論されておりますので、また、いずれ明らかになってくると思います。
 
 ほかにいかがでしょうか。はい、それでは菅原委員どうぞ。

 (後略)

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