第562回中医協総会(2023年11月8日)【速記録】


2023年11月8日の中医協総会

 入院、外来、調剤について、それぞれ「その2」として具体的な論点がたくさん出ました。ザックリまとめると、急性期医療の厳格化、かかりつけ薬剤師・薬局の負担強化、オンライン診療の光と影──というあたりが隠れたテーマでしょうか。(隠れてない?)

 ちょっと久しぶり感のある今回の中医協は前回10月27日(金)から約10日ぶりの開催。先週11月1日(水)は開催されず、続いて3日(金)は祝日でしたので、まるまる1週間空きました。(助かった・・・)

 1.総  会(8:45~8:50)⇒ 新委員の所属決定
 2.合同部会(9:00~9:37)
 1.総  会(9:43~12:17)

 冒頭、委員の交代が告げられて所属する会議などを決め、ここで総会はいったん中断。薬価と費用対効果の合同部会(業界ヒアリング)を終えて、再び総会という流れでした。議題は4項目です。

【議 題】
 1.部会・小委員会に属する委員の指名等について
 2.入院(その2)について
 3.調剤(その2)について
 4.外来(その2)について

 新たな委員は4人。診療側1人、専門委員3人です。診療側の新委員には、島弘志氏(日本病院会副会長)の後任として、日本医療法人協会の太田圭洋副会長(名古屋記念財団理事長)が就任しました。医療・福祉の巨大グループを運営しているだけあって、早くもエンジン全開でした。

 専門委員には、赤名正臣氏(エーザイ常務執行役)に代わり、藤原尚也氏(中外製薬参与 渉外調査担当)のほか、オンラインになっても出席することのなかった羽田健一郎氏(長野県長和町長)に代わり岡本章氏(九度山町長)が就任しましたが、欠席でした。村井泰介氏(バイタルケーエスケー・ホールディングス社長)の後任には、アルフレッサホールディングスの荒川隆治社長が就任しました。

 合同部会後に再開した総会は、①入院(9:45~10:52)、②調剤(10:52~11:31)と進み、ここでいったん休憩。その後、最後の議題③外来(11:38~12:17)を終えて散会しました。

 ①の資料は表紙を含めて172ページ、②は85ページ、③は58ページ。論点の記載は全て最終ページです。

【P172】
172_入院(その2)

【P85】
085_調剤(その2)

【P58】
058_外来(その2)

 医療課が何をどうしたいのかは資料に書いてあるとして、委員の受け止めはどうだったか。入院では松本発言をチェックしておけばよろしいかと思います。

 こちらをご覧ください。⇒■ 急性期入院医療について松本発言と日医の反論(PDF:5MB)

 調剤では、質疑冒頭の森発言(10分超え!)、それに続く医師会発言、それらに対する支払側の発言あたりがポイントでしょうか。

 ⇒ ■ 調剤(その2)に関する日薬、日医、健保連等の発言(PDF:4MB)
 
 外来(その2)はオンライン診療の不適切な運用への規制を強化する一方、好事例を踏まえて拡大する方針で、おおむね一致した感じでしょうか。

 ただ、規制と緩和の両方を同時に強めると現状からたいして動かないでしょうから、どちらをより強めるかが見所でしょうか。

 まず、「規制」について厚労省は、ガイドラインに反する診療(不眠症の患者に初診で向精神薬を処方)のほか、患者と医療機関の場所が離れているケースをひねり出してきました。「居住地と異なる県」としていますので、どのぐらい離れているかは不明です。

 資料では、患者調査の回答(n=1,385)のうち、わずか5.3%にとどまる「受診歴あり」を拾い上げ、さらにその中で、「居住地と異なる県」の6.8%を抽出。かなりレアなケースだと思いますが、この6.8%を詳しく分析しています。

022_外来(その2)

 意訳すると、「オンライン診療の専門クリニックは許さん!」という方針でしょうか。次期改定で厳しく規制するための「エビデンス」を無理矢理ほじくり出してきました。「97.5%」に目が行きますが、内容をよく読むと・・・。

023-2_外来(その2)

 一方、好事例として紹介されたのは、札幌医科大学医学部消化器内科学講座の仲瀬裕志教授から提供されたとされる「D to P with Dの実践例」です。

053_外来(その2)

 厚労省によると、「DtoP withD」とは、患者が医師といる場合のオンライン診療。説明ページにこんなイラストが出ています。

050_外来(その2)

 この日、“デビュー戦”となった太田圭洋委員(日本医療法人協会副会長)は福島県立医大の取り組みを紹介した上で、「D to P with Dは今後かなり重要になってくる」と期待を込めました。

〇小塩隆士会長(公益委員/一橋大学経済研究所教授)
 (診療側・支払側・専門委員が一通り発言を終えた後)ありがとうございました。ほかに、ご質問、ご意見、はい。それでは、安川委員からお願いいたします。
〇安川文朗委員(公益委員/京都女子大学データサイエンス学部教授)
 はい。意見と言いますよりも、ちょっと情報提供になるかと思いますけれども、遠隔連携の診療に関してですが。アメリカのニューメキシコ大学がホストになって、遠隔連携の診療の支援の仕組みがかなりアメリカの中で行き届いているところがあるんですが、そこで何をしているかと言いますと、「D to P with D」というところで言うと、ドクターから相手方の遠隔地への、へき地の診療所のドクターと、それから患者さんはもちろんなんですが、そこに必ず薬剤師が入ると。ですから、この「D to P with D」の「P」は、患者の「P」であると同時に、ファーマシストの「P」が入っています。そこで、何をやってるかと言うと、必ずしも、その薬に対して習熟されていないお医者さんに対して、その薬はこうやって使ってくださいっていうのをその場で薬剤師が指導するという仕組みをつくっています。何か、そういうふうな取組も遠隔連携診療、「診療」と言うよりも「診療支援」というかたちで、何か同時に取り組めるといいのかなあと、今、思って伺っておりました。以上です。
〇小塩会長
 はい、ありがとうございます。飯塚委員、お願いします。
〇飯塚敏晃委員(公益委員/東京大学大学院経済学研究科教授)
 はい、ありがとうございます。論点に関しまして、まず不適切なオンライン診療に対する懸念については共有をいたします。一方でですね、18ページの資料にありますように、全体的な、おそらく適切であるオンライン診療もあまり進んでいないというのが実態かなというふうに思いました。本日、へき地の議論がありましたけれども、もう、へき地のみならずですね、地方の小都市では、今後、人口減少が非常に大幅に進むと。これはもう確実でありまして、そのような状況でオンライン診療が今後、重要な役割を果たしていく場合も多いだろうというふうに考えられます。したがって、へき地に限らず、医師の少数な地域というのも把握されておりますから、そういったところでオンライン診療が進んでいないのか、同様にですね。進んでいないのか。その場合、なぜ進まないのかというのを利用者側の状況等も含めて実態把握をして、今後のそういった人口減少も踏まえてですね、検討していく必要があるかなというふうに思います。以上です。
〇小塩会長
 ありがとうございました。はい、太田委員、お願いいたします。
〇太田圭洋委員(日本医療法人協会副会長)
 ありがとうございます。1つだけ。今、遠隔連携診療の話が出ましたので情報提供です。これ、今後、我が国、へき地だけじゃなくて地方で、なかなか人口が減ってって、専門医にかかりづらくなるというような大きな課題だということで今、話ありましたが。
 腎不全、透析の世界でもですね、今、福島県では福島県立医大の先生がかなり離れた所の先生と連携しながら、いわゆる「D to P with D」というようなかたちで、何とかその地域で維持透析を維持できるような体制っていうのを構築しているような例があります。どうしてもやはり、これから専門性の高い治療というのを、なかなか地方部では受療していくことが難しくなっていく中で、この「D to P with D」という一番最後の部分っていうのは、かなり今後、重要になってくるんじゃないかというふうに思っております。
 なので、先ほど炎症性腸疾患の例がございましたが、これ、たぶん、いろんな領域で、たぶん、これ、出てきてるんじゃないかというふうに思いますので、そういう意味で、しっかりと情報を集めていただいて、何らかのかたちで進めていくことができるようなかたちでご配慮いただけたらというふうに思います。以上でございます。
〇小塩会長
 ありがとうございました。ほか、いかがでしょうか。はい。ほかに、特にご質問等はないようでしたら、本件に係る質疑はこのあたりとしたいと思います。今後、事務局におかれましては、本日いただいたご意見も踏まえて対応していただくようにお願いいたします。
 本日の議題は以上です。次回の日程につきましては、追って事務局より連絡いたしますので、よろしくお願いいたします。本日の総会はこれにて閉会といたします。長時間どうもありがとうございました。

 

2023年11月8日(水)に都内で開催され、YouTube でライブ配信された中医協総会(第562回)の速記録(非公式)です。弊社が独自に作成したものですので、厚生労働省の公式議事録とは異なることにご注意ください。

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