第559回中医協総会(2023年10月18日)【速記録】


2023年10月18日の中医協総会

 今週から週2ペース(水・金)がスタート。この日は総会、合同部会、薬価専門部会が開かれました。総会では、オンライン資格確認の拡大について答申。政務官と公益委員が記念写真を撮る場面が映し出されました。

 1.総会(9:00~10:23)
 2.合同部会(10:31~11:13)
 3.薬価専門部会(11:20~11:46)

 寝たきりで自宅療養している高齢者など、病院に通えない人もマイナ保険証を使えるようにするため、訪問看護や訪問診療などでのオンライン資格確認について先週10月11日に諮問があり、今回18日の総会で答申となりました。

【議題】
 1.個別改定項目について
 2.答申について
 3.医療機器の保険適用について
 4.DPC対象病院の病床数変更に係る報告について
 5.個別事項(その2)について

 次期改定に向けた検討は議題5「個別事項(その2)」で、がんと脳卒中について論点が示されました。資料の目次は次のとおり。括弧内は論点のページです。

 1.がん対策について
   1-1 外来化学療法について(P42
   1-2 がん診療連携拠点病院等について(P51
 2.脳卒中対策について(P72

 忙しい人のために、論点ページの切り抜きを張り付けておきます。

【P42】
042_個別事項(その2)

【P51】
051_個別事項(その2)

【P72】
072_個別事項(その2)

 P42の論点が5つあり、全部で7つです。質疑では、いつものように論点に沿った発言でした。厚労省担当者への質問はありませんでした。診療側代表と支払側代表の発言は以下のとおりです。

〇長島公之委員(日本医師会常任理事)
 まず、42ページ。外来化学療法についての論点です。1つ目の、外来化学療法における基準や指針のあり方について、副作用や緊急時の対応マニュアルを作成しておくことは非常に有用な取組と言えます。また、次の論点とも関連しますが、地域の医療機関とも共有することで、緊急時の対応にも役立てることもできます。しかし、今回の資料では、基準や指針をまだ作成していない医療機関も一定程度あることが示されておりますし、また、抗がん剤も古いものから新しいものまで、さまざまな種類があることなども踏まえますと、今後、学会やがんセンターなどで標準的な基準、指針が作成されることも期待されます。こうした状況を踏まえますと、現時点で基準や指針を作成している医療機関を評価するのであればよいですが、次期改定で一律に義務化するのは時期尚早であると考えます。
 次に、2つ目の専任の医師等を常時1人以上配置できない施設についてです。現状は、疑義解釈で示された経過措置によって外来腫瘍化学療法診療料2が算定可能となっていますが、患者さんが通い慣れた医療機関で治療を継続することは一定の必要性があると考えます。取扱いの検討にあたっては、時間外の対応については、診療料1を算定している医療機関と、レジメンンや、先ほどの指針等の情報を共有した上で連携することなどが考えられます。また、多くの患者さんに対応することを踏まえ、一定程度、包括的なかたちで連携を定めておくなど、効率的な運用を進めることも重要と考えます。
 3つ目の入院、外来での化学療法の比率についてです。がんの治療と生活や仕事と両立させるために、外来で化学療法を実施する体制を拡充する方向性は理解しております。その上で、今回の資料では、急性期充実体制加算や総合入院体制加算を届出している施設も含めて、ほとんどの患者さんに対して、入院で化学療法を実施している医療機関があることも示されておりますが、こうした医療機関で行っている化学療法の内容や、外来で化学療法を実施できる体制を整備することに必要な人員体制の確保も踏まえ、さらに周囲の医療機関との役割分担も考慮しながら検討する必要があると考えます。
 4つ目の就労と治療の両立支援につきましては、療養・就労両立支援指導料の普及が事業所の産業医等からの情報提供が起点となっており、その協力が得られないと算定できない等の課題などもあって進んでいない一方で、外来腫瘍化学療法診療料の1つの意義が治療と仕事の両立にあることからすると、患者さんを支援するという意味で、もう少しシンプルな情報提供のあり方を検討する必要があるのではないかと考えます。
 5つ目の外来腫瘍化学療法における薬剤師の関わり方につきましては、各医療機関における薬剤師や外来患者の人数などに応じて、現場でさまざま工夫されていると思いますので、そうした取組の1つとして捉えるのがよいと考えます。
 次に、51ページ。がん診療連携拠点病院等についてです。特例型の場合、指定要件の充足状況が不十分であることを踏まえると、通常型の点数と差を設けることも考えられますが、がん拠点病院加算の仕組みが拠点の類型変更に引きずられ過ぎており、診療報酬の意味が曖昧になっているような印象も受けます。先ほどの外来化学療法の論点では、専任の医師を常時配置できない施設における連携のあり方や、実患者数ベースで見た場合の入院患者での化学療法の比率が取り上げられておりましたが、今後は拠点の類型だけでなく、そうした課題に対する実績なども加味した上で加算のあり方を検討していくことも考えられるのではないでしょうか。
 72ページ。脳卒中対策についてです。前回改定で手当てした医療資源の少ない地域に限らず、医師少数区域など、基幹病院までの到達時間が長い地域なども含めて、一次搬送施設と基幹施設との連携を評価し、脳卒中診療における地域医療格差を是正していくことは重要な課題です。資料では、連携方法として、情報通信機器を用いた連携によって専門ではない医師と専門の医師が連携することが紹介されており、その有用性は理解できます。地域で実際に役に立つものとするためには丁寧に適切に進めるべきと考えます。そのためには、単に医師少数地域というだけでなく、地域の脳卒中医療に関わる医療資源や医師の偏在や不足の実態をきちんと踏まえること、地域における対面による医療連携の実績を基盤とすることが必要と思います。また、脳卒中における連携の基本が、超急性期脳卒中加算を算定するような病院で常に一刻も早く確実に診療を受けられる体制を築くことにありますので、これに対する評価を充実していくことも大変重要であると考えます。私からは以上です。
 (中略)
〇松本真人委員(健康保険組合連合会理事)
 まず総論といたしまして、がんの関係でございますが、資料6ページを拝見しますと、長期的なトレンドとして、入院から外来へという移行と、平均在院日数の短縮が進んでいることがうかがわれます。ただ、令和2年度は入院・外来いずれも患者数が減少し、在院日数が増加に転じております。これが新型コロナの影響で、がん検診があまり実施されず、新規の患者が減少したことによるものであれば、がん医療そのものは停滞ともいえる状態に入っておりますけども、引き続き動向を注視していきたいというふうに考えております。
 それでは、論点にございます42ページですね。外来化学療法についてコメントいたします。まず1点目についてでございますが、あらかじめ基準や指針を作成し、緊急対応が必要となった場合に患者が安心して安全に治療を受けるためには非常に重要でございます。資料の11ページ、12ページを見ますと、外来腫瘍化学療法診療料を算定している病院は7割以上が基準や指針を作成しておりますけども、この診療料を届け出ていない病院では取組が遅れておりますので、外来化学療法を実施している病院であれば基準や指針を作成することがある意味で当たり前になるように関連する診療報酬の施設基準を厳格化すべきというふうに考えております。
 2点目でございますが、質の高い外来化学療法を評価する観点から、外来腫瘍化学療法診療料に高い点数を設定していることを踏まえますと、専任の医師をしっかり配置して患者の安心・安全を確保すべきであり、施設基準を安易に緩和することには反対でございます。
 3点目でございますが、これも資料22ページ、23ページを拝見しますと、外来化学療法の体制が施設基準となっている急性期充実体制加算の施設のほうが、外来化学療法の体制が施設基準になっていない総合入院体制加算の施設に比べますと、全て入院で対応している患者割合が高い傾向にございます。急性期充実体制加算については、体制だけではなく、外来化学療法の実績を施設基準に定めることも検討すべきではないかと考えております。
 4点目でございますが、資料36ページを拝見しますと、外来腫瘍化学療法診療料を算定した施設において、療養・就労両立支援指導料の算定が少ないことがわかります。安心して働きながら質の高い治療を継続できるように、外来腫瘍化学療法診療料の届出を行っている医療機関については、両立支援の体制整備を求められることが考えられます。
 最後、5点目でございますが、診療前に薬剤師が関わることで副作用が減少することは患者にとっても大変有益なことであり、医療の質の向上、医療の効率化、さらに医師の働き方改革にもつながるということであれば推進する方向で検討する余地はあるというふうに考えております。
 次に、1-2 がん診療連携拠点病院等についてコメントいたします。令和4年8月に新設された都道府県がん診療連携拠点病院等の特例型については、説明にもありましたように要件を満たしていないということを踏まえますと、指定要件を満たす病院と同等に評価すべきではないと考えます。減算の規定を導入するか評価区分の細分化というかたちでの検討をすることも考えられると思います。
 続きまして、脳卒中対策でございますけども、t-PA静注療法や血栓回収療法など、発症早期に治療を開始することは重要であり、一次搬送施設と基幹施設が連携して体制を構築する必要性は十分理解できます。一方で、リスクが伴わないのかといった懸念も残りますので、安全に治療が実施できる体制を十分に考慮すべきと考えます。私からは以上になります。

2023年10月18日(水)に都内で開催され、YouTube でライブ配信された中医協総会(第559回)の速記録(非公式)です。弊社が独自に作成したものですので、厚生労働省の公式議事録とは異なることにご注意ください。

 ※ 定期購読の会員様は、パスワードを入力してダウンロードしてください。

● 定期購読者には、独自に作成した速記録(非公式)をお送りしています。
● 定期購読(有料)などの案内をご希望の方は、資料請求のページをご覧ください。

資料請求のページへ .

保護中: 第559回中医協総会(2023年10月18日)【速記録】

第559回中医協総会(2023年10月18日)【速記録】_ページ_001 のコピー

第559回中医協総会(2023年10月18日)【速記録】_ページ_005 のコピー

サイズ: 10 MB
議事録のページ総合
総会議事録のページ
薬価専門部会議事録のページ
材料専門部会議事録のページ
■ 議事録のページ【小委・分科会】

第587回中医協総会(2024年4月10日)【速記録】

第587回中医協総会(2024年4月10日)【速記録】

第586回中医協総会(2024年3月22日)【速記録】

第586回中医協総会(2024年3月22日)【速記録】

第224回中医協・薬価専門部会(2024年3月22日)【速記録】

第224回中医協・薬価専門部会(2024年3月22日)【速記録】
PAGE TOP