総会の主なテーマは7月12日に続いて2回目となる在宅医療。薬価部会と費用対効果部会はレカネマブ関連を中心に議論されました。
1.消費税分科会(8:45~9:00)
2.総会(9:30~10:46)
3.薬価専門部会(10:53~11:30)
4.費用対効果部会(11:35~12:14)
最初に開かれた消費税分科会は約2年ぶり。委員が大幅に入れ替わり、今後の進め方を決めて15分ほどで閉会しました。
その30分後に総会が始まり、最初に支払側の鳥潟美夏子委員(全国健康保険協会理事)が就任挨拶。鳥潟委員が所属する部会等を決めた後、「在宅(その2)」の議題に入りました。
【目次】
1.在宅医療の現状等について
2.患者の特性に応じた訪問診療について
3.往診について
4.在宅医療における24時間の医療提供体制の確保について
5.在宅における緩和ケアについて
6.在宅における看取りについて
7.訪問栄養食事指導について
資料「在宅(その2)」は表紙を含めて115ページ。最終ページに、2~7の6項目について論点が示されています。資料説明は約20分、質疑が約1時間でした。「往診」を独立した項目として取り上げている点に注目です。コロナ禍であんなにお世話になったのに、手のひら返しで叩くのでしょうか。
全体的な印象としては、医療課から見て「好ましくない在宅医療」があるようで、「こんな医療機関があるけど、いかがなものか?」と言いたげなデータを散りばめた作りになっています。
この日の総会には、欠席することが多い支払側の末松則子委員(三重県鈴鹿市長)が参加して意見を述べたほか、いつもは沈黙が多い診療側の江澤和彦委員(日本医師会常任理事)、茂松茂人委員(日本医師会副会長)も積極的に発言しました。
いろいろな意見が出ましたのでポイントを絞りにくいのですが、次期改定の方向性を読む上では支払側代表の発言をチェックするのが早そうです。次のように述べました。
〇松本真人委員(健康保険組合連合会理事)
まず総論としてですね、在宅医療につきましては今後、需要がさらに拡大していくことを踏まえますと、そうしたニーズ、すなわち量をどう満たしていくかとともに、そのサービスについて質が確保、担保されることは言うまでもありませんけども、検討の際には、医療の支え手が限られていること、この減少が見込まれることも踏まえまして、これまで以上に効率化の視点も意識しなくてはならないことを、まず強調させていただきたいと思います。
それでは、115ページの論点に沿ってコメントさせていただきます。まず1点目の「患者の特性に応じた訪問診療の提供」のうち、包括的支援加算と頻回訪問加算については、対象患者の重点化が必要だと考えております。特に頻回訪問加算については、20ページにあります円グラフにありますように、悪性腫瘍以外の算定割合が非常に高く、重症化した場合の評価であるにもかかわらず長期に連続で算定されている実態を踏まえますと、適正化の視点で対応を検討すべきと考えます。
また、30ページ、31ページを拝見しますと、訪問診療をかなり多く実施している医療機関があることや、施設の患者を多く診ている医療機関でターミナルケア加算が少ないことがわかります。効率的に訪問診療を実施している実態を踏まえますと、ここにおいても適正化すべきという観点が必要かと思います。
続きまして、往診に移りますが、49ページ以降を見ますと、訪問診療のあり・なしで、主傷病名や医療内容に違いがあることがわかります。往診は主に緊急時に外来を受診できない患者などが念頭に置かれたものであることを考えますと、必ずしも実態が合っていないように思いますので、本来、想定している患者が困らないようにすることを考慮しつつ、診療報酬上の対応を図っていくべきです。
続きまして、「24時間の医療提供体制の確保について」でございますけども、医療法の改正もございまして、今後議論を深めてまいります、かかりつけ医機能として極めて重要な要素ですので、安易に在支診・在支病の要件緩和をして対応していくということには賛成しかねます。在支診・在支病には、しっかりと求められている役割を果たしていくことが重要だと考えております。
一方で、今後、増え続けていくニーズに対応していくためには、在支診・在支病だけで対応できるものでないことは十分に理解ができますので、在支病以外の医療機関との連携の中で、患者にとって安全・安心な体制をどう構築していくかが課題だと考えております。
前回改定で、これを推進するために在宅療養移行加算、これの新設が62ページに記載がございますけども、さらに評価するということよりも、まず実態を把握していただきたいということが重要だと思っております。
続きまして、在宅における緩和ケアでございますが、資料73ページを見ますと、受け入れ先が十分に確保できず、在支診・在支病のない医療機関が末期の悪性腫瘍患者を受け入れていないことから、患者のニーズに対して十分ではないことがわかります。ICTの活用も踏まえ、対応していくことも重要な課題ではないかと認識しております。
次に、在宅における看取りでございますが、これも患者のニーズに応えられているかが重要な視点であると考えております。これまでも診療報酬上で充実を図ってきた経緯を踏まえますと、診療報酬上の課題自体の課題があるのか、提供体制そのものに課題があるかはしっかりと見極める必要があるというふうに考えます。
最後に、「訪問栄養食事指導について」でございますが、109ページの栄養ケア・ステーションの活用が不十分な状況がわかりますので、まずは周知を図ることが不可欠ですが、ケア・ステーションだけでは絶対数が少ないことがわかりますので、管理栄養士がいる在支診・在支病が他の医療機関をサポートすることもあり得るんではないかと考えております。また、この訪問栄養食事指導が医師の判断で必要と認めた者に対して実施されるとのことですけども、公的医療財源で給付するものとしては、もう少し、どういった場合に指導が必要となるのか、運用の明確化を図っていくことも重要なポイントだと考えております。私からは以上になります。
一部の事業者によって「効率化」が進むと、けしからんということで「適正化」という話になるのですね。そして線引きしようとして失敗し、次の改定で対応する。この繰り返しです。
なお、会議後にP113が訂正されています。赤字部分が削除箇所です。
在宅での麻薬の処方関係や、末期の心不全や呼吸器疾患の患者関係の記載については、前ページまでの関連資料で説明していない事項であるため削除したとのことです。
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