3月12日の中医協総会で、新薬11成分19品目の薬価収載が了承された。日本イーライリリーの「ゼップバウンド」は原価計算方式(組成・投与形態が同一で効能・効果が異なる既収載品がある新薬の特例)で算定され、補正加算は付かなかった。支払側からは、保険財政への影響や算定方法に関して、質問が飛んだ。 【本根優】
ゼップバウンドの効能・効果は、複合的な要因からなる慢性疾患である「肥満症」。BMIに関しても基準を設けている。こうした肥満症に対するGLP-1関連製剤の収載はノボノルディスクファーマ「ウゴービ」に続いて2つ目となる。
ゼップバウンドのメーカー市場規模予測はピーク時の10年度目に319億円(予測投与患者数13万人)。一方で、ウゴービは5年度目に328億円(10万人)と弾いた。
松本真人委員(健康保険組合連合会理事)は2つの製品が競合し、単純な足し算にならないにしても「少なくとも日本で300億円を超える肥満薬市場が形成される」と指摘。「安全性の観点からも、自由診療を含めてガイドラインを逸脱して使用することがないよう、厚労省は使用実態をしっかりモニタリングしてほしい」と要望した。
また、高町晃司委員(連合「患者本位の医療を確立する連絡会」委員)は、2番手のゼップバウンドについて、先行したウゴービの1日薬価に合わせる「類似薬効比較方式での算定にならないのか」などと質問。これに対して、厚労省は「いわゆるリポジショニング特例」を採用したとし、「ウゴービとの類似薬効(比較方式)より原価計算方式のほうが算定の値が低かった」と説明した。
いわゆる「リポジショニング特例」は2010年度に創設された。当時はリポジショニング後の改良薬の薬価が、同一成分の既収載品の100倍以上に算定されたことが問題視された。
一方で、22年度には、開発が進みにくい分野の開発促進の観点から「未承認薬・適応外薬検討会議」の議論を踏まえて開発公募が実施された新薬については「特例の対象外」とする見直しが行われている。