2022年12月14日の中医協総会(定例3件と実調)

2022年12月14日の中医協総会

 約1カ月ぶりの総会です。10月から7回連続で開かれた薬価専門部会は一休みで、今回は次期改定の基礎資料となる「第24回医療経済実態調査」の議論が中心となりました。【新井裕充】

 この日は、午前10時から調査実施小委員会と総会が開かれ、予定よりも早く1時間ほどで閉会しました。

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 1.調査実施小委員会 10:00 ~ 10:28
 2.総会 10:30 ~ 11:44
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 最初に開かれた調査実施小委員会では、前回11月16日の会合で了承された「実施案」を踏まえ、具体的な「調査票案」や「要綱案」などが示されました。

 続く総会の議題は、①臨床検査の保険適用、②費用対効果評価専門組織からの報告、③先進医療会議からの報告、④調査実施小委員会からの報告──の4項目です。

 ①では、令和5年1月収載予定の臨床検査「ベンタナ OptiView BRAF V600E (VE1)」を承認。②では、費用対効果評価による「アリケイス」の薬価引下げを了承しました。委員の発言はありませんでした。

 ③は報告事項です。先進医療会議で承認された先進医療A・Bの技術2件が示されました。Aの技術名は「次世代シーケンサーを用いた流死産絨毛・胎児組織染色体検査」、Bの技術名は「特発性大腿骨頭壊死症に対する自家濃縮骨髄液移植」です。ここでも委員の発言はありませんでした。

 最後の議題④では、公益委員の飯塚敏晃氏(東京大学大学院経済学研究科教授)が発言。このように述べました。

 「先ほどの小委員会で議論がありましたことをここで一度、一応、確認しておきたい。特に一般診療所に関して、主たる診療科目によってはサンプル数が非常に少なくなって統計としての信頼性が低い可能性があるという議論があった。したがって、現在の回答状況、あるいはサンプル数等を検討いただいて、診療科別に抽出率を変更する等、より信頼性の高い統計となるよう、事務局におかれては、お考えいただくように、お願いしたい」

 これに対する診療側の反論はなく、このまま閉会となりましたが、飯塚委員の発言の後、小塩隆士会長(一橋大学経済研究所教授)が「これは事務局でぜひ検討していただければと思います」と述べたのが気になります。調査の実施要綱などに少し修正が入るのかもしれません。

 総会に先立つ調査実施小委員会で飯塚委員は、診療所の調査について内科以外のサンプル数が少ないことを懸念し、抽出率の引上げを求めました。具体的な診療科名は言いませんでしたが、「非常に少ない診療科目に関して何らかの診療報酬の改定等があって、それを検証したい場合に非常に難しいことになる」と述べました。

 医療経済実態調査をめぐっては、いわゆる“回答バイアス”がずっと問題になっています。膨大な量の調査ですので、病院では総務課などのスタッフに余裕が必要でしょうし、小規模なクリニックではよほど協力的な院長でなければ難しいでしょう。「もっと先にやることがある」という気もします。

 飯塚委員と事務局(保険局医療課)との押し問答が続く中で、厚労省の担当者が理解を求めた発言は次のような内容です。

【厚労省保険局保険医療企画調査室・荻原和宏室長】
 ・基本的には抽出率を引き上げていくのが今後、考えられる方向性。
 ・過去の調査との連続性という観点もある。
 ・「主たる診療科別」というものが「病院の機能」や「薬局の機能」のように、仕組みとしてかっちりした分類がされているものかどうか。
 ・それぞれの診療科についての検証は別途、改定の検証調査を実施するので、そこで分析するというのがこれまでの中医協での議論。
・この実態調査はあくまで基礎資料としての活用になるので、全てに応えられるものではない。

【厚労省保険局医療課・眞鍋馨課長】
 ・スケジュール的、予算的な制約もあるので、大きく変えるのは今のところ技術的に厳しい。
 ・診療所の実態については、どのぐらいの精度で見れば中医協の議論に資するのか。
 ・「主たる診療科」のほかに「従たる診療科」を持っているような診療所もある。

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