厚生労働省医政局地域医療計画課は3月19日、「地域医療構想に関するワーキンググループ」(WG、座長=尾形裕也・九州大学名誉教授)の第25回会合を開き、「重点支援区域の状況について」と題する資料を示した。(新井裕充)
質疑では、国による技術的支援の内容について「医業経営コンサルタントなるものが、お手伝いしますよということで、どんどんやっていくなんてことがあってはならない」との意見があった。
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厚労省の担当者は「『重点支援区域』の趣旨はまさに構想の進捗であり、これまでの構想の流れを活性化するためにある」と確認した上で、「ご懸念のコンサルティングは経営の改善を目標とするようなものとは若干違っており、地域の医療提供体制をどうやって確保して持続可能にしていくかという観点で行うもの」などと説明した。
厚労省担当者の説明と、これに対する質疑は以下のとおり。
〇尾形裕也座長(九州大学名誉教授)
(前略) はい、ありがとうございました。それでは「資料1」(今後の地域医療構想に係る議論の活性化に資する実態分析等)についての議論はこの辺にしまして、
次に、資料の2でございますが、重点支援区域の状況について、まず説明を事務局のほうからお願いいたします。
説明
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〇厚労省医政局地域医療計画課・松本晴樹課長補佐
それでは「資料2」をご覧いただければと存じますけれども、1ページ目でございますけども。
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こちら、重点支援区域につきまして、背景としましては「経済財政運営と改革の基本方針2019」ですね、
昨年6月の骨太の方針におきまして、地域医療構想の実現に向けて、全ての公立・公的医療機関等に係る具体的対応方針について、
診療実績データの分析を行い、
具体的対応方針の内容が民間医療機関では担えない機能に重点化され、
2025年において達成すべき医療機能の再編、病床数等の適正化に沿ったものとなるよう、
重点支援区域の設定を通じて、
国による助言や集中的な支援を行うということとされております。
実際、重点区域の運用を開始しておりますが、2番の「基本的な考え方」に3点ございます。
1点目ですけども、申請の方式ですが、都道府県が調整区域において重点支援区域を申請を行う旨、合意を得た上で申請をするというふうな方式を採らせていただきました。
2点目ですが、「重点支援区域」につきましては、都道府県からの申請を踏まえて厚生労働省において選定をするということと、
選定は複数回行うということがございます。
3つ目ですが、これは注意点ですけれども、
この「重点支援区域」の申請または選定自体が、再編統合の方向性を決めるものではないということ。
さらに、「重点支援区域」に選定されたあとも、再編統合等の結論については、あくまでも地域医療構想調整会議の自主的な議論によるものである、
ということを明示をしております。
3の「選定対象」でございますけれども、「複数医療機関の再編統合事例」ですね。
この「再編統合」というのは統廃合だけではございません。
米の1にございますように、ダウンサイジング、機能の分化・連携、集約化、機能転換等が含まれるということでございます。
けれども、複数医療機関がまたがる再編統合事例を対象としております。
(※)1・2となっておりますけれども、今回の424病院と言いますか、9月26日に公表いたしました再検証対象の医療機関が対象で、
その対象でない場合も「重点支援区域」の選定対象になります、ということですね。
あとは複数区域であっても、再編統合事例は対象になるということでございます。
4番ですけれども、「支援内容」としましては、技術的・財政的支援ということでございまして、
技術的支援としましては、
地域の医療提供体制ですとか、再編統合を検討する医療機関に関するデータ分析と、
関係者との意見調整の場の開催等を挙げております。
財政的支援につきましては、地域医療介護総合確保基金の優先配分ですとか、
新たな病床のダウンサイジング支援の手厚い実施ということになります。
こちらの、優先して選定する事例でございますけれども、右側の点線の四角の中をご覧いただきたいんですが、
例えば、①から④まで例示をされていますが、複数の設置主体ですね。
例えば、ここのワーキングでも複数回指摘されてますが、例えば、日赤と済生会のように設置主体が違う場合。
②番ですね、病床数を削減する大きさがですね、大きい場合は調整が大変になるので、こういうところを優先する。
3つ(=③)ですけども、要は、医師派遣の医局が違うというようなものですとか、
人口規模や関係者の多さが大きいもの、というようなところを優先してやっていくということでございます。
「A項目」「B項目」の再検証対象医療機関かどうかというのは選定の優先順位には影響しないということでございます。
スケジュールでございますけれども、今後、随時募集をしていくということでございますが、
1月31日に「重点支援区域」として選定をしたのは宮城県から2つですね、仙南区域と、石巻・登米・気仙沼区域の2つ。
滋賀県の湖北、山口県の柳井と萩でございます。という状況でございます。
今後も適宜、こちら、ワーキングのほうにアップデートをしていきたいというふうに考えております。
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〇尾形裕也座長(九州大学名誉教授)
はい、ありがとうございました。それでは、ただいまの「資料2」につきまして、はい、織田構成員どうぞ。
質疑
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〇織田正道構成員(全日本病院協会副会長)
この「重点支援区域」について、一番、やっぱり重要なところは、調整会議において合意を得た上で、県のほうから申請するっちゅうことになってますね。
ただ、この調整会議に出てないですね、民間病院含めて、有床診療所等もありますけれども、
ここらへんは、徹底は行われているのかどうかですね。
それとあと1つ。
この複数区域をまたがる再編統合事例というのは、構想区域をこれ、越えてるわけですか? そこの説明をしていただきたい。
それと、今、「重点支援区域」、3区域、選ばれてるわけですけども、これ以外に申請があったかどうか。
その3点、お聞かせください。
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〇尾形裕也座長(九州大学名誉教授)
3点、ご質問ですので、お願いします。
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〇厚労省医政局地域医療計画課・松本晴樹課長補佐
はい、これまでのご説明の状況ですけれども、複数回にわたりまして都道府県向きにはですね、ご説明をしておりまして、
まさに対象というのはですね、今回の再検証対象医療機関だけではないんですよということですとか、幅広いものが対象になりますよということを都道府県向けにご説明しているところです。
2月のですね、アドバイザー会議との合同の開催した説明会におきましては、地域の医師会の先生なんかにもご参画をいただきまして、こちらでもご説明をしているところです。
その先ですね、地域の隅々までですね、どのぐらい説明が行き渡っているかということに関しては、地方にお任せしているというのが現状でございます。
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〇厚労省医政局地域医療計画課・鈴木健彦課長
それから、2点目、3点目でございますが、複数の医療圏にまたがるということでございますが、
相談の中には、いわゆる隣接する構想圏の2つの病院を合併したいというようなお話も来ている、相談には来ているところでございます。
そういったところも加味しまして、ここに入れておりますが、具体的には、そういった相談の中で対象にするかどうかっていうのは考えたいというふうに思っています。
それからあと、第1回目の時に、これ以外の所で申請があったのかということでございますが、
申請は、ここの、今回、3都道府県5地域だけでございます。
ただし、相談はありました。今も、現には相談をされておりまして、これは第2弾ということで、
今、ちょっと、感染症の関係でいろいろとバタバタしておりますが、今後その第2弾を行う際のための相談というのは、今、現在でも数件、数カ所から受けているところでございます。
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〇尾形裕也座長(九州大学名誉教授)
織田構成員、どうぞ。
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〇織田正道委員(全日本病院協会副会長)
分かりました。この合意についてはですね、たぶん医師会をはじめ、みんな入ってるんで、だいたい行き渡ってるとは思いますけども、
そこら辺は丁寧に、説明していただきたいと思います。
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〇尾形裕也座長(九州大学名誉教授)
はい、中川構成員。
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〇中川俊男構成員(日本医師会副会長)
この資料の中で、まずは調整会議において申請を行う合意を得た上で申請をして、「重点支援地域」になったと。
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その上でですね、左下の4の「支援内容」なんですよ。
「技術的支援」と「財政的支援」というふうになっていますが、「財政的支援」というのはどのような再編統合するのかということで、財源の額と言いますか、大きさが決まってくるんだと思いますけど、
一番心配なのは「技術的支援」です。
これは、再検証対象医療機関とかを公表したのもですね、地域医療構想調整会議の議論を活性化するだけでなくて、
各自治体の首長さんへの、まあ、言葉は悪いですけど、牽制球の意味もあったというふうに思うんですよね。
で、この「技術的支援」の所の支援内容で、「重点支援区域に対する国による技術的・財政的支援」は以下の予定って書いてありますけど。
国がですね、技術的支援ができるのかという問題が非常に気になります。
で、一番心配は、せっかく流れが付いたのに、医療需要も、それから、
要するに、患者さんもいないし、医療従事者、医療資源もない所で首長さんが大病院を新築するというようなことが仮にあってはならないと思うんですよね。
そのときに、「国による技術的支援」というところが非常に気になります。
これ、やっぱり、現場、現場のですね、その調整会議の、いちいちですね、了承を得ながら、合意を得ながら丁寧に進めていくと。
その、まあ、行司役を国がするのかなと思うんです。
もっと言うと、医業経営コンサルタントなるものがですね、そういう職種の方がこのお手伝いしますよということで、どんどんやってくなんていうことがあってはならないというふうに私は思ってまして。
その辺のところを、どういうふうにお考えなのか、お願いします。
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〇尾形裕也座長(九州大学名誉教授)
じゃ、事務局、お願いします。
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〇厚労省医政局地域医療計画課・松本晴樹課長補佐
こちらの「重点支援区域」の趣旨は、まさに構想の進捗というところにございまして、
構成員ご指摘のようにですね、これまでの構想の流れを活性化するためにあるものでございます。
ですので、ご懸念のですね、コンサルティング、要は、経営の改善を目標としたりですね、そういうようなものとは、ちょっと、若干違っていて、
地域の医療提供体制をどうやって確保して持続可能にしていくかという観点で行うものでございます。
ですので、「技術的支援」と言っても、コンサルティングというよりは……、
コンサルティングなんですけども、経営というよりは地域のデータをどういうふうに分析して、どういうふうなニーズに対して供給をするのかということですとか、
先生、「行司役」というご指摘をしていましたけれども、「場の設定」というような形で、ご支援ができればというふうに考えております。
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〇尾形裕也座長(九州大学名誉教授)
よろしいですか。ほか、いかがでしょう。伊藤構成員。
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〇伊藤伸一構成員(日本医療法人協会会長代行)
中川構成員と同じようなお話なんですけども、この「重点支援区域」につきましては、当該地域の構想調整会議において合意を得たということなんですが、
実は、その地域において、その合意を得るということは非常に難しい。
言ってみれば、言い換えればですね、地域が問題の重大性をまだ十分に認識していない中で議論が進まないというところにこそ、重点的に支援をしなければいけないところがあるというふうに思うわけでありまして。
1例を申し上げれば、2017年の病床報告で6,700ほどの病床がある所が、2025年にはですね、5,000の病床になるんだという目標が示されて、
つまり、1,600床ほど減るということは、これは200床の病院で言いますと、8つの病院が消えてなくなるという、非常に重大な変化をしなければいけないところではありますけども、
そこが果たして、構想区域の中で協議をして、重点区域に名乗りを上げるかっていうことになりますと、とてもそこは懐疑的であります。
従って、国のほうから何か、こういうような所に関しては重点区域として、いわゆる、何て言いますか、「手を挙げなさい」というような指示をしていただくことは可能でしょうか?
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〇厚労省医政局地域医療計画課・松本晴樹課長補佐
ご指摘ありがとうございます。
「重点支援区域」はあくまでも地方自治というか、地域の医療に関しては地域のこと、地域の方々が一番分かってるというふうなことを前提としまして、地域の自主的な取組を支援するということでございますので、
あくまでも「支援」なので、こちらからですね、名指しをするっていうようなところとはちょっと趣旨が違うのかなというふうに思います。
委員のご指摘というところは、やはり、今日の前半の議論でもございましたけれども、
どのようにですね、地域の意思決定者に現状と、あと将来のこう、ニーズと言うかですね、変化の大きさというのをいかに認識してもらうかということでございまして、
先ほど総務省の室長からもご指摘を頂きましたけれども、地域の関係者、メディア、意思決定者を含めて巻き込んでいくという動きがですね、
昨年の9月以降、出ていますので、これをさらに大きくしていくということが重要ではないかというふうに考えております。
〇尾形裕也座長(九州大学名誉教授)
よろしいですか。ほか、いかがでしょう。伊藤構成員。
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〇伊藤伸一構成員(日本医療法人協会会長代行)
特に、そういう意味でですね、「地域の議論を活性化する」という、その意味合いも含めてですね、
いわゆる、これだけの変化率なるところに対して、もう少し積極的な動きをすべきだというような指標って言いますかね、
そういうものを国から発出していただくと議論が進むんではないかと思います。またぜひ、よろしくお願いいたします。
〇尾形裕也座長(九州大学名誉教授)
はい、ほかいかがでしょう。
よろしいですか。それでは、この「重点支援区域」については、優先的にその財政的な支援を行うということでもありますので、
今後、その状況については引き続き当ワーキンググループのほうにも適宜、報告をお願いをしたいというふうに思います。
ありがとうございました。一応、用意しました資料、議題は以上でございますが、最後に、全体を通して、あるいは「その他」でも結構ですので、何かご意見、ご質問等があれば、この際、承りたいと思います。
はい、中川構成員どうぞ。
(後略)