入院料の高い7対1病院を減らすための誘導策として導入された「地域包括ケア病棟」の機能が今さら議論になっている。各病院の“経営努力”により厚労省の政策は大失敗に終わったため、次はどうするかという話である。支払側委員の間でも意見が分かれており、“いたちごっこ”は今後も続きそうだ。(新井裕充)
地域包括ケア病棟がテーマになった11月29日の中医協総会で、支払側委員の幸野庄司氏(健康保険組合連合会理事)は、同病棟の3機能のうち「在宅復帰支援」が不十分であることを指摘。自宅から入院する患者の割合を増やすとともに、在宅復帰率を引き上げることなどを主張した。
幸野氏の見解を要約すると、現在流行している「自院内」でのキャッチボールをやめさせて、在宅医療を支援する機能を充実させるべきということか。相変わらず、“お花畑”である。
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たとえそのような改定を実施したとしても、医療法人トップの親族らが運営する病院近くの有料老人ホームなどに患者を移して「在宅復帰させました」とするだけであって、「自院内でのキャッチボール」から「自宅とのキャッチボール」に変わるだけの話である。
いつものことだが、幸野氏の発言の意味がいまいちよく分からない。3機能のうち、「在宅復帰機能が弱い」と言いたいのか、それとも「在宅支援機能に絞れ」と言いたいのか。
幸野氏の発言に対し、診療側委員の猪口雄二氏(全日本病院協会会長)は「幸野委員が言われたとおり、バランスよく行われるのが非常に重要」と返した。ポストアキュート機能もしっかり残せという意味だろう。
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猪口氏の発言に支払側委員が続いた。吉森俊和氏(全国健康保険協会理事)は「ポストアキュート、サブアキュート、在宅。この辺のいわゆる役割、機能、これをしっかり各地域で果たしていただく」と述べ、3機能を「バランスよく」と主張した猪口氏に同調。さらに「あまりにきめ細かくガチガチにやると複雑化していく」と述べ、幸野氏の言う「厳格化」に慎重な姿勢を示した。
同日の議論について、詳しくは下記のPDFを参照。
▼ いろいろなシンポジウムや講演会などに行くと、皆さん一様に「地域包括ケアシステムを推進し」とか、「地域で求められている医療ニーズに応え」などとおっしゃる。しかし、たいてい綺麗事だ。実態はどうかと言えば、「いかに患者を囲い込むか」である。ここにメスを入れなければ、どんな改定をやっても、いたちごっこは終わらない。先日、ある病院の経営本部長に「看護必要度は実態に合っているか」と尋ねたところ、「え? そういう患者を集めるだけだから」と返されてしまった。
11月29日(金)の中医協総会【議事録】 ..