かかりつけ医の定額制に向け、議論スタート ── 10月30日の中医協総会

2019年10月30日の中医協総会

 厚生労働省は10月30日の中医協総会で、「患者が自分のかかりつけ医を任意で登録する制度の検討を始めた。診察料を月単位の定額として過剰な医療の提供を抑えたり、かかりつけ医以外を受診する場合は負担を上乗せして大病院の利用を減らしたりする案を検討する。身近なかかりつけ医が効率的な治療や病気の早期発見にあたる仕組みを普及させ、医療費の伸びの抑制を狙う」──。カギ括弧の中は、今年6月25日付けの日経報道のコピペである。(新井裕充)

日経新聞「かかりつけ医定額制」記事_20190625 10月30日の中医協総会では、「外来診療」が議題に上がった。翌日、共産党系の保団連や民医連はさぞかし大騒ぎしているのではないかと思ってホームページを見たが、その気配はない。赤旗も騒いでいない。緊急談話や声明を出しているわけでもない。

 はて、どうしたことか。私がズレているのか。いや違う。中医協の情報が行き渡っていないのだろう。

 この議論の内容については、同日の議事録(抜粋)をご覧いただくとして、まずは最近の経緯を振り返りたい。6月25日、日経新聞がかかりつけ医の登録制について大きく報じた。いつもの先行報道で、的中率は抜群である。

 その翌日、中医協総会が開かれた。閉会間際に診療側の松本吉郎委員(日本医師会常任理事)が笑みを浮かべながら、やさしく尋ねた。「これまで中医協の場で、そのような審議を行ったことはないと理解しておりますけども、厚生労働省で検討を始めたのかどうか、その事実関係はどうなのか。事務局に答弁を求めたいと思います」。

 これに対し、厚労省保険局医療課の森光敬子課長が「そのような事実はございません」と答えると、松本委員は「ありがとうございます。安心いたしました!」とニッコリ微笑み、会場の笑いを誘った。

 ▼ 詳しくはこちらを参照
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松本吉郎委員(日本医師会常任理事)_20191030

■ 「火のない所に煙は……」

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 6月27日、病院団体の会合に木下栄作課長補佐が招かれ、次期改定に向けた議論の進捗状況を報告した。木下氏は「筆頭補佐」と言われる立場で、いわば改定チームのリーダーである。会場には、元中医協委員の鈴木邦彦氏の姿があった。

 木下補佐の講演終了後、傍聴していた鈴木氏がこう尋ねた。「数日前の日本経済新聞の1面トップに、『かかりつけ医を定額制に』というのがドーンと出ましたですが、日経に出てきたんで、どういう背景で出てきた話なのかと、今後、中医協で改定について議論する可能性があるテーマなのかどうか教えていただきたい」。

 木下補佐は苦笑しながら、「昨日の中医協の中でも、2号(診療)側委員の委員の先生(松本吉郎・日本医師会常任理事)から、その記事に関して『(事実関係は)どうなのだ』というご質問を頂きまして、私どもの課長、森光から『事実無根です』というご回答をさせていただいておりますので、ああいうような議論、今後するのかというお問いかけに関しましては、そういうことはこれまでもないし、厚労省の中で、ああいう検討が進んでるというようなことはないということは、森光(敬子・医療課長)のほうから否定させていただいてるというところでございます」と答えた。

 ▼ 詳しくはこちらを参照

 これに鈴木氏が「火のない所に煙は……」と返すと、会場は爆笑。木下補佐は「繰り返しでございますが、今の段階におきましては、そういうことはないというふうにご理解いただければというふうに思います」と重ねて否定した。

■ 外来管理加算、後期高齢者終末期相談支援料

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 ところで、読者の皆さんは外来管理加算の「5分ルール」が大騒ぎになった2008年度改定を覚えているだろうか? 「後期高齢者終末期相談支援料」が新設されて、その翌年の7月に凍結し、消えてしまったことは覚えているだろうか。

 外来管理加算の「5分ルール」導入に向けて使用されたデータについて、保団連が強く抗議したことは覚えているだろうか。その結果、当時の課長補佐が責任を取って飛ばされた、のかは分からないが、かなり不利な立場になってしまったことは覚えているだろうか。その課長補佐が、現在の課長である森光敬子氏であることはご存知だろうか。

 ▼ 保団連の声明はこちらを参照
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厚労省保険局医療課・森光敬子課長_20191030
 10年前、課長補佐として奮闘し、しかし結果として道半ばで断念した。忸怩たる思いはあるだろう。改めて課長の立場で完遂したいと思うのは、当然のことかもしれない。

 10月30日の中医協総会では、かかりつけ医機能の評価をめぐる議論があり、最初のうちは「またいつもの舌戦か」と思って聴いていたのだが、途中から「書面で事前に患者の同意を得る」とか、2008年度改定前のような議論が展開された。経団連の宮近清文氏の発言(議事録のP49)に、今後の方向性が集約されているだろう。

 外来診療に関する質疑の部分について、詳しくは同日の議事録(抜粋)をご覧いただきたい。

 なお、会員の方は下記よりダウンロードをお願いしたい。今回の中医協議事録は、写真とスライド付きで全112ページとなっている。

議事録ダウンロードページへ .

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