2020年度改定に向け「個別事項(その1)」を示す〔①リハビリ〕 ── 9月18日の中医協総会

厚労省保険局医療課・森光敬子課長_20190918中医協総会

 厚生労働省は9月18日、中央社会保険医療協議会(中医協、会長=田辺国昭・東大大学院法学政治学研究科教授)の総会を開き、2020年度診療報酬改定に向けて「個別事項(その1)について」と題する92ページの資料を示した。前半は「リハビリテーション」、後半は「医薬品の効率的かつ有効・安全な使用」という二本立てで、厚労省保険局医療課の森光敬子課長が約40分間にわたって説明した。本稿では、「リハビリテーション」の説明部分をお伝えする。【新井裕充】
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 この日の中医協は、総会のみが開かれた。議題は「個別事項(その1)」のみ。資料の中で「リハビリテーション」は3項目で構成され、最後に「論点」が示されている。

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 資料説明の冒頭で森光課長は、これらの項目を「3つの視点」とし、平成28年度と平成30年度改定での主な項目を振り返った。論点では、「リハビリテーションに係る現状や平成30年度診療報酬改定後の算定状況等を踏まえ、必要な見直しを検討してはどうか」としている。

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40_【中医協総会】個別事項(その1)_20190918

 資料説明の中で、森光課長が今後の方針を示す場面もあった。平成28年度改定で新設された「経口摂取回復促進加算」について「加算1は取られているが、2はほとんど算定されていない。非常に要件が厳しすぎるのではないかと分析している」とコメントしたほか、「リハビリテーション実施計画書」については、「一部簡略化、効率化といった視点で見直す必要があるのではないかと考えている」と述べた。

 「リハビリテーション」に関する森光課長の説明について、詳しくは以下のとおり。

説明 ──(1)リハビリテーションに係る診療報酬(概要)

〇田辺国昭会長(東大大学院法学政治学研究科教授)
 それでは、お揃いのようでございますので、ただいまより第423回中央社会保険医療協議会総会を開催いたします。まず、委員の出席状況についてご報告いたします。本日は、岩田(利雄)専門委員(千葉県東庄町長)がご欠席でございます。なお、会議冒頭のカメラの頭撮りはここまでとさせていただきますので、ご協力のほうをよろしくお願い申し上げます。

 それでは、次期診療報酬改定に向けた議論として「個別事項(その1)について」を議題といたします。事務局より資料が提出されておりますので、事務局のほうよりご説明の方をお願いいたします。では医療課長、よろしくお願いいたします。
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01_【中医協総会】個別事項(その1)_20190918

〇厚労省保険局医療課・森光敬子課長
 はい。資料「総─1」 に従いまして、ご説明をさせていただきたいと思います。本日は「個別事項(その1)」といたしまして2つ。リハビリテーション関係と、それから医薬品の効率的かつ有効・安全な使用について、という2つのテーマにつきまして資料を提出させていただいております。
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02_【中医協総会】個別事項(その1)_20190918

 リハビリテーションにつきましては「第1ラウンド」のほうで、なかなか個別に取り扱う機会がなかったため、今回、リハビリテーションの概括につきまして、まず整理をして、お示しをするということで整理をさせていただいたものでございます。
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03_【中医協総会】個別事項(その1)_20190918

 まず、リハビリテーションにつきまして3つの視点。1つは、リハビリテーションに関する診療報酬の概要。それから、直近の算定の状況。そしてまた、リハビリテーション領域における課題や取組等について、ご紹介等をさせていただきたいというふうに思います。資料「総─1」のほうをご覧いただきたいと思います。
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04_【中医協総会】個別事項(その1)_20190918

 リハビリテーションにかかります診療報酬の現状の整理というところで図があるかと思います。上半分に関しましては、診療に伴う急性期、回復期、維持期・生活期という形で、アクシデントから回復していく、その様子を示しております。

 それに従いまして、リハビリテーションの評価ということで下の図でまとめております。基本的には、リハビリテーションは疾患別リハビリテーションを中心といたしまして、さまざま、これを患者さんに投入していくということになりますけれども、基本的にはここにありますように「リハビリテーション総合計画評価料」というような所がありますが、計画を立てて個別、疾患別リハビリテーションを行っていくと。

 また、その疾患別リハビリテーションの枠から少し外れた分野でございますけれども、重要な部分につきまして、例えば
がんリハビリテーション、認知症患者リハビリテーション、障害児、難病、集団コミュニケーション療法といったような形で個別の評価というものが設定されております。

 また、上の病期に応じまして早期については、急性期については「早期離床・リハビリテーション加算」「ADL維持向上等体制加算」といったような形で、集中的なリハに関しての加算というような形が設けられている。

 また、維持期・生活期の介護保険で提供されますリハビリテーションに向けて、その円滑な移行に向けて、例えば「目標設定等支援・管理料」というようなもので、円滑な移行を促進するといったような仕組みが設けられているということになってございます。

 続きまして、リハビリテーション料の概括になります。5コマ目を見ていただければというふうに思います。
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05_【中医協総会】個別事項(その1)_20190918

 これにつきましては、疾患別リハビリテーション料の概括になります。心大血管疾患リハビリテーション料、脳血管疾患等リハビリテーション料、廃用症候群リハビリテーション料、運動器リハビリテーション料、呼吸器リハビリテーション料、この5つが大きな柱となっておるところでございます。

 基本的には「1単位20分」ということで算定をされ、標準的算定日数はそれぞれ疾患別に定められているということになっております。

 また、この1単位というのは20分でございますが、それぞれ病期に従って、例えば急性期だと9単位まで、とかの算定が可能といったような形で設定されているというものでございます。
 
 6コマ目につきましては、それぞれの施設基準をご提示させていただいているところでございます。
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説明 ──(2)直近の算定状況等

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 続きまして、直近の診療報酬の改定についてご紹介をさせていただきます。まず、8コマ目から10コマ目は、平成28年の改定で見直しを行いました疾患別リハビリテーションについてご説明をした内容でございます。ご参考までに見ていただければと思います。
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 また、スライドの11コマ目からは算定状況ということでございます。まず、疾患別リハビリテーション料全体の概要でございまして、届出医療機関数、算定回数とも増加傾向にございます。
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11_【中医協総会】個別事項(その1)_20190918

 また、12コマ目を見ていただきますと、算定回数が多いのは運動器リハビリテーション(料)、また脳血管リハビリテーション料が非常に多いということがよく分かるかと思います。
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 続きまして、13コマ目から17コマ目につきましては、各疾患別リハビリテーション料のそれぞれの算定状況、それから届出医療機関数というのを整理して載せております。順調に、どのリハビリテーションについても算定回数、届出施設数は伸びてきているということが見えるかと思います。
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 リハビリテーション料が少し、26年、27年、下がっているのは、これはもともと脳血管リハビリテーション料に入っていたものを分離したためというふうに思われます。

 それから、18コマ目が「リハビリテーション総合計画評価料」でございます。
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18_【中医協総会】個別事項(その1)_20190918

 これにつきましては、多職種が共同してリハビリテーションの計画を立てるということで評価されているものでございまして、これにつきましても順調に算定回数が伸びているということが見えるかと思います
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19_【中医協総会】個別事項(その1)_20190918

 19コマ目が、これが退院時の指導を評価したものでございまして、「退院時リハビリテーション指導料」の概要でございますけれども、これも順調に伸びていることが分かるかと思います。
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20_【中医協総会】個別事項(その1)_20190918

 「リハビリテーション計画提供料」でございますが、これは介護のリハビリテーションに移行を予定されている方につきまして、その情報の提供等を評価したものでございまして、平成30年には多く算定されているということになっております。
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21_【中医協総会】個別事項(その1)_20190918

 21コマ目は、これは「目標設定等支援・管理料」でございまして、これも介護保険に移行するにあたって、その目標を設定・管理というようなことを多職種で行うことを評価したものでございまして、算定が順調に伸びているのが見えるかと思います。
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22_【中医協総会】個別事項(その1)_20190918

 また、22コマ目からは個別、疾患別リハビリテーションではなく、平成28年に導入されましたリンパ浮腫の総合的治療ということで評価された点数でございます。
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23_【中医協総会】個別事項(その1)_20190918

 次に23コマ目は、これは摂食機能療法、これの明確化という形で、さらに口からの経口摂取、栄養摂取……、経口摂取の回復促進というものを目指して「加算2」というものを設けて、さらに促進をするために設定されたということが28年に行われております。
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24_【中医協総会】個別事項(その1)_20190918

 それから30年には、24コマ目を見ていただきますと、特定集中治療室においての多職種による早期離床・リハビリテーションの取組に関する評価を行うということで、この「早期離床・リハビリテーション加算」というのが設けられたということでございます。

 また、30年には同様にリハビリテーションの領域においても働き方改革の視点から要件の緩和というのを行っております
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25_【中医協総会】個別事項(その1)_20190918

 25コマ目には、リハビリテーションの領域における要件の緩和ということで、常勤配置を求めていたものにつきまして複数の非常勤職員を組み合わせて常勤換算での配置が可能ということで改定を行った、ということが25コマ目にご紹介させていただいております。
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26_【中医協総会】個別事項(その1)_20190918

 また26コマ目。これは専従要件の緩和を、ということで④の所を見ていただきますと、回復期リハビリテーション病棟入院料におけるリハビリ専門職、これは病棟に専従という要件にしていたんですが、これを緩和しまして入院中の患者に対する退院前の訪問指導、また退院後3カ月以内の患者に対する外来リハビリテーション等を行なっても差し支えないということで、要件の緩和を行ったということでございます。
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27_【中医協総会】個別事項(その1)_20190918

 続きまして27コマ目でございます。これは在宅のリハの指導の点数等でございます。

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28_【中医協総会】個別事項(その1)_20190918

 それから28コマ目。これは摂食機能療法の算定の状況でございまして、これも増加傾向にございます。

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29_【中医協総会】個別事項(その1)_20190918

 29コマ目。先ほどちょっとご紹介しました「経口摂取回復促進加算」でございますけれども、実はこの加算の1については取られているんですが、2のほうが28年に創設されたんですが、ほとんど算定されていないということで、これについては非常に要件が厳しすぎるのではないかというふうに分析しているところでございます。
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30_【中医協総会】個別事項(その1)_20190918

 続きまして30コマ目でございますが、「リンパ浮腫複合的治療料」ということ。先ほどご紹介したものでございますけれども、これにつきましても現在、算定回数は平成30年で約1,400回程度ということで、そこに表示させていただいております。
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31_【中医協総会】個別事項(その1)_20190918

 また、そのリンパ浮腫にならないようにするための指導管理料ということで、これは子宮がんですとか乳がんの悪性腫瘍のリンパ節郭清のあとに指導を行う点数ということで設定されているものでございますが、これも平成30年には3,000回ぐらいの算定回数ということでございます。
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32_【中医協総会】個別事項(その1)_20190918

 32コマ目。これは前回にもお示ししましたけれども、平成30年で新たに設けられましたリハビリテーション関係の点数。
先ほどご紹介いたしました「特定集中治療室管理料」「早期離床・リハビリテーション加算」でございますが、現在、算定回数が7,649ということでございまして、これは順調に算定されているかと思います。

 また、小児の運動器疾患指導管理料というのも平成30年に創設しておるんでございますが、これについては運動器疾患を有するお子さんの管理料ということでございますけれども、これは、算定回数は1,990回ということで算定されているという状況でございます。

説明 ──(3)リハビリテーション領域における課題及び取組等

33_【中医協総会】個別事項(その1)_20190918

 ここからはリハビリテーション領域における課題、取組につきまして少しご紹介を、最新の取組につきましてご紹介をしたいと思います。

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34_【中医協総会】個別事項(その1)_20190918

 34コマ目でございます。これは、摂食嚥下障害を有する脳卒中の患者は、摂食嚥下障害を有していない脳卒中患者と比較して低栄養である方が多いというふうに報告がなされておるところでございます。

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35_【中医協総会】個別事項(その1)_20190918

 35コマ目を見ていただきますと、これは回復期リハビリテーション病棟に入院された患者さんでございますが、経管栄養管理下にある低栄養の脳卒中の患者に対しまして、管理栄養士による介入が週1回の群が、月1回の介入の群と比較しまして有意にBMIの増加量が大きく、また3食経口摂取に移行できる移行者の割合、および運動のFIMが有意に高いということが示されております。
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36_【中医協総会】個別事項(その1)_20190918

 また、36コマ目でございます。これは摂食嚥下チームが脳卒中患者に摂食機能療法や口腔ケアを積極的に行なった場合、経口摂取の割合が高く、重症の脳卒中であっても経口摂取が可能となる可能性があるということで示されているデータでございます。
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37_【中医協総会】個別事項(その1)_20190918

 また、ここで近年のリハビリテーションに係る研究報告等のご紹介を少しさせていただきたいと思います。37コマ目でございます。効果的な機能回復のためには、最適な難易度での十分量の反復運動が必要とされておりまして、運動の難易度調節や再現性、持続性の観点から、療法士による訓練を補完するものとして、さまざまな研究が進められております。

 上の点線で囲った所でございますけれども、訓練支援ロボットを用いたリハビリテーションについて上肢の動作反復を行う訓練や歩行補助ロボットを用いた訓練。国内の脳卒中ガイドラインでも、一定の位置づけをされてきているという状況でございます。また、それぞれ上肢機能の有意な改善や歩行速度、歩行機能等の改善が見られるといった報告があるということでございます。

 また、下の囲みでございますけれども、機能的電気刺激を用いたリハビリテーションについて同様に国内の脳卒中ガイドラインで一定の位置づけをされておりまして、歩行速度の改善等が見られるという報告も頂いておるというところでございます。
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38_【中医協総会】個別事項(その1)_20190918

 続きまして、38コマ目でございます。先ほど少しご紹介いたしましたリンパ浮腫に関する報告でございますけれども、リンパ浮腫の原因となる疾患については、上の点線囲みに記載させていただいておるとおり、腋窩リンパ節または鼠径リンパ節群など広範囲なリンパ節の郭清を行う手術が必要な疾患というのがリンパ浮腫の原因となっております。

 また、下の点線囲みのような病期の分類がされておりまして、「Ⅱ期後期」以降には組織の線維化が見られ、皮膚が硬くなる状態となるということから、より早期の介入が重要であるというふうにされておるところでございます。
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39_【中医協総会】個別事項(その1)_20190918

 スライド39コマ目でございますが、現行の「リハビリテーション実施計画書」というのは現在、それぞれの疾患別リハビリテーション料に合わせて様式が定められておりまして、非常に詳細に記載をする内容となっております。

 ただ一方で、小児の患者ですとか、それ以外の患者に対しては非常に使いやすい様式が定められていないというご指摘がありまして、これにつきましても一部簡略化、効率化といった視点で見直す必要があるのではないかというふうに考えておるところでございます。

 以上の整理を踏まえまして論点、40コマ目でございますが、
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40_【中医協総会】個別事項(その1)_20190918

 このようなリハビリテーションに関わる現状、それから診療報酬、30年、28年の診療報酬改定後の算定状況を踏まえまして、必要な見直しを検討してはどうかということをご提示させていただきます。

 続きまして、「医薬品の効率的かつ有効・安全な使用について」ということで、ご説明をさせていただきます。

 (後略)

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