7対1病院を「病床要件」で引きずり下ろすか ── 8月28日の基本問題小委員会

厚労省保険局医療課・森光敬子課長_20190828中医協基本問題小委員会

 「7対1にふさわしくない」と判断される病院をどのような方法で引きずり下ろすのか。厚生労働省がやたら繰り返すデータの1つに「病床規模」がある。病床数が一定以下の病院が旧7対1入院基本料(現行の急性期一般入院料1)を取れないように「病床要件」を導入すれば、“なんちゃって急性期”を引きずり下ろすことができるのではないか。そんな思惑が込められた審議が中医協で静かに進んでいる。【新井裕充】

 厚労省は8月28日、中医協総会の下部に位置する「基本問題小委員会」を開き、入院医療を主なテーマに挙げた。会合には、中医協の技術的な専門組織である「入院医療等の調査・評価分科会」の分科会長が出席し、今年6月から7月までの3回にわたる審議の状況を報告した。

 この分科会では、地域包括ケア病棟や療養病棟など入院医療の全般にわたる検討が一通りなされ、既に多くの「論点」が示されている。しかし、次期改定に影響する重要な会議だからなのか、同分科会の議事録は昨年10月から公開されていない。大量の資料が厚労省のホームページにアップされている。

 厚労省はこの日の小委員会に、過去3回分の資料を合体させて提示。144ページに及ぶ資料の説明を担当した分科会長は個別の内容に踏み込むことはせず、あらかじめ用意された“台本”に基づき、「〇ページから〇ページまでは〇〇について記載しております」という確認程度にとどまった。しかし時折、コメントを加える項目もあった。

 それは何か。事務局(厚労省保険局医療課)の意向を踏まえた分科会長が最初に指摘したのは「入院患者の状態」で、「急性期一般入院料1では、おおむね病床規模が小さいほど高齢の患者が多い傾向が見て取れる。急性期一般入院料1では、おおむね病床規模が小さいほど要支援・要介護の患者が多く、自立の患者が少ないという傾向が見て取れる」と説明した。

 質疑では、当然のごとく支払側の委員がこれに食い付いてきた。いつもなら、日本医師会の委員が最初に長い演説をして“試合開始”となるのだが、この日は違った。ふだんはあまり発言せずに観戦することが多い経団連の委員が真っ先に挙手し、「病床規模が小さいほど高齢の患者、要支援・要介護の患者の割合が多く、自立の患者が少ない傾向にあったとあるが、この要因について具体的にどのような点が想定されるのか」と尋ねた。

 事前の打ち合わせが不十分だったのか、それとも不意を突かれたのか。厚労省の担当者は回答に窮しながら、「さらに分析をする」と言葉を濁した。そこで、別の支払側委員が「病床規模別の集計」を求めると共に、「何らかの課題や傾向が見られた場合は、今後の論点とすべき問題」と加勢した。

 入院基本料に病床要件を導入することは、現行制度の枠内で可能だろうか。厚労省保険局医療課に尋ねたところ、「そういう仮定のお話にはお答えできません」と一蹴されてしまった。

 では、やはり「重症度、医療・看護必要度」の見直しで対応するのだろうか。そうすると、高度急性期病院は認知症の高齢者を受け入れなくなり、「患者選別につながる」との声も聞こえてきそうだ。

 病床要件の導入に関係する同日の議論は、以下のとおり。

20190828中医協基本問題小委員会

[田辺国昭会長(東大大学院法学政治学研究科教授)]
 定刻前ではございますけれども、お揃いのようでございますので、ただいまより第196回中央社会保険医療協議会・診療報酬基本問題小委員会を開催いたします。(中略)

 それでは、早速でございますけれども、議事のほうに入らさせていただきます。本日は「入院医療等の調査・評価分科会における検討状況について(報告)」を議題といたします。

 「入院医療等の調査・評価分科会」の尾形分科会長にお越しいただいておりますので、尾形分科会長よりご報告のほうをお願いいたします。では、よろしくお願いいたします。
.
[尾形裕也分科会長(九州大学名誉教授)]
 はい、分科会長の尾形でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 申し訳ありません。風邪の後遺症で、ちょっと声が出にくくなっておりまして、少しお聞き苦しい点があるかもしれませんが、ご容赦いただきたいと思います

 6月12日の基本問題小委員会におきまして、「2018年度調査結果速報」の概要について、ご報告をさせていただいたところでございます。そのあと、(2019年度)第3回(6月19日)から第5回(7月25日)までの分科会における検討状況につきまして、ポイントを絞ってご報告をさせていただきたいと思います。

 (中略)

 11ページからでございますが、入院患者の状態につきまして、入院料、病床規模ごとにをお示しをしてございます。

012_入院分科会における検討状況_20290828中医協小委員会

 それでは、12ページにお進みをいただきたいと思います。12ページでございますが、一般病棟の入院患者の年齢階級別分布を見ますと、「急性期一般入院料1」では、おおむね病床規模が小さいほど、高齢の患者が多い傾向が見て取れます。

 次の13ページからは要介護度別、さらに15ページからは日常生活自立度別の患者割合について、お示しをしております。

014_入院分科会における検討状況_20290828中医協小委員会

 14ページおよび16ページにございますように、「急性期一般入院料1」では、おおむね病床規模が小さいほど、要支援・要介護の患者が多く、自立の患者が少ないという傾向が見て取れます。

 (中略)

 以上、ちょっと長くなりましたけれども、分科会からの報告とさせていただきます。

宮近清文委員(経団連社会保障委員会医療・介護改革部会部会長代理)_20190828中医協基本問題小委員会
.
[田辺国昭会長(東大大学院法学政治学研究科教授)]
 はい、どうもありがとうございました。事務局から補足があれば、お願いいたします。
.
[厚労省保険局医療課・森光敬子課長]
 特にございません。
.
[田辺国昭会長(東大大学院法学政治学研究科教授)]
 はい、それでは、ただいまの説明につきまして、何かご質問、ご意見等がございましたら、よろしくお願いいたします。では宮近委員、お願いいたします。
.
[宮近清文委員(経団連社会保障委員会医療・介護改革部会部会長代理)]
 質問を3点ほど、させていただきます。まず1点目ですけども、29ページの「一般病棟入院基本料等」に関する内容です。29ページの「現状・課題」におきまして、一番上の部分ですが、

029_入院分科会における検討状況_20290828中医協小委員会

 「患者の状態」に関し、「入院料・病床規模ごとの患者の状態をみると、急性期一般入院料1では、許可病床99床以下を除き、病床規模が小さいほど、高齢の患者、要支援・要介護の患者の割合が多く、自立の患者が少ない傾向にあった」とありますけれども、この要因については具体的にどのような点が想定されるのかという質問です。

 (中略)
.
[田辺国昭会長(東大大学院法学政治学研究科教授)]
 3点ほど、ご質問ございましたけれども、(分科会長と医療課長)どちらかな・・・
.
[厚労省保険局医療課・森光敬子課長]
 はい。
.
[田辺国昭会長(東大大学院法学政治学研究科教授)]
 はい、では医療課長、お願いいたします。
.
[厚労省保険局医療課・森光敬子課長]
 まず、29コマ目、スライド29ページ目の急性期入院料の1で、病床の規模別に見たときに年齢が高い方のほうが多・・・

 えーと、急性期一般入院料1では、病床規模が小さいほど高齢の患者、要支援・要介護の患者さんの割合が多く、自立の患者が少ない傾向にあったという、今、そういうデータが分かっているところでございます。

 で、さらに、私、入院分科会のほうでは、この患者さんにどのような医療だとかが提供されているのか、ということをさらに分析をするということで、

 さらにその詳細な内訳と、どのような医療がそのような方に提供されているのか、というようなこと、

 それから、退院に向けてどのような支援がされているのか、といったようなことも含めて分析をするという予定になっておるところでございます。
.
[田辺国昭会長(東大大学院法学政治学研究科教授)]
 よろしゅうございますか。ほかいかがでございましょう。では平川委員、お願いいたします。
.
[平川則男委員(日本労働組合総連合会総合政策局長)]
 今回、調査に当たって何点か、お願いがございます。1つは20ページから、医療・看護必要度の基準の関係についてデータが示されています。

 20ページの、例えば、急性期一般入院料の1と2と3については、おおむね、これまでの議論の経過から想定された範囲の中かなと思いますが、

022_入院分科会における検討状況_20290828中医協小委員会

 ただ、22ページを見てみますと、やはり199床以下の病院で、バラツキがあるというところについて、ありますので、この要因や実態について、もう少しちょっと、分析ができるんであれば、お願いをしたいと思っております。

 また、24ページ以降は、基準の見直しの影響ということであります。

 新設されたのは、基準②を満たす患者の割合が入院料ごとに集計されておりますけれども、これについては、さらに、さっきのバラツキの問題もありましたけども、

 病床規模別の集計も可能であれば、お願いをしておきたいというふうに思います。何らかの課題や傾向が見られた場合は、今後の議論の論点とすべき問題なのではないかな、というふうに思っているところであります。

 (後略)

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