新たに保険適用された高度医療機器の導入支援などにかかる費用を誰が負担すべきかが議論になっている。「本来は病院が負担すべき」との指摘もある中、こうした管理費などが医療機器の価格に反映されている点について医療費を支払う立場の保険者代表は「その経費が回り回って患者負担になっているのは是正すべき」とし、医療側の委員は「オリジナルメーカーが負担するのが筋だ」と主張した。【新井裕充】
● 登録読者には、独自に作成した議事録(非公式)をお送りしています。
● ご登録方法など、詳しい案内をご希望の方は、資料請求のページをご覧ください。
厚生労働省は8月7日、医療機器などの価格を決めるルールの見直しに向けて中医協・保険医療材料専門部を開き、医療機器業界からのヒアリングを実施した。業界団体の代表者らが一堂に会し、それぞれ意見を述べた後で質疑に入った。
その中で、最も盛り上がりを見せたのが「適正使用支援業務」をめぐる議論。支払側の委員は、医療機関と販売業者との関係に着目し、「本来は医療機関が担うべき役割を販売業者がサポートしている」と問題視し、厚労省担当者に改善を求めた。
日本医師会の委員は販売業者と製造業者との関係に着目し、「販売業者が肩代わりしているが、本来はメーカーが負担すべきで、メーカーと卸のやり取りの中で処理をしていただくのが妥当」と主張した。
これに対し、業界団体の代表は「メーカーの拠点のない所は販売業者が非常に大きな役割を担う」と理解を求めたが、議論は医療機器の集約化をめぐる問題に発展。支払側委員が集約化に向けた業界の姿勢をただすと、業界代表が「集中化せよとか、日本の保険医療制度をこう変えたら医療機器のコストが下がるとか、そんなことを言うつもりはない」と語気を強める場面もあった。
この議論の発端は、新しい医療機器の価格を決める際に考慮される「流通経費率」。6月26日の同部会で支払側の委員は「医療材料の流通経費率が9.6%と、医薬品の7.5%に比べて高い。こういったものが流通のやり方を反映しているのであれば是正しなければいけない」と指摘した。
これに対し厚労省の担当者は「医薬品と医療機器の差として『少量多品目』という現状がある。例えば、心臓の大きさに応じて心臓の弁をお届けするなど、多品目に対して医療現場のニーズに対応している中で一定の費用がかかるため、それに基づいた価格の設定等をしている」と説明。その上で、「団体のヒアリングの機会にまたご指摘を賜り、どういう形で改めていくかを議論させていただければありがたい」と述べ、今回のヒアリングを迎えた。
意見陳述で業界団体の代表者は、流通経費率が医薬品よりも高い理由について「適正使用支援業務」にかかる費用を挙げたため、この費用負担の在り方が議論になった。
適正使用支援業務をめぐる議論について、詳しくは下記のPDFを参照。
【8月7日号】2020年度診療報酬改定レポート(P62~69)
※ 同部会での発言全文(議事録)は、診療報酬改定レポート8月7日号をご覧ください。
PDFファイルのダウンロードはこちら