海外の医学部を卒業して医師になるルートについて、厚生労働省医政局医事課の佐々木健課長は7月18日の会議で「ある一定程度の規模になってきたので、現状を含めて議論をしていくことが必要ではないか」との考えを示した。【新井裕充】
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厚労省は同日、社会保障審議会(社保審)の医療部会(部会長=永井良三・自治医科大学長)を開き、医師養成課程を通じた偏在対策について現在の取組や今後の課題などを報告した。
佐々木課長の説明に続く質疑で、山口育子委員(NPO法人ささえあい医療人権センターCOML理事長)は「海外で医師免許を取得して日本で医師になる人が数年前から毎年増えてきていると聞いており、現在、大学1校分ぐらいになっている」と指摘。都道府県別の募集定員上限の見直しなどの偏在対策について「調整が効かない」と懸念し、今後の対応を尋ねた。
佐々木課長は「ご指摘のとおり100名近い状況。一定程度の規模になってきた」との認識を示した上で、関係する会議で何らかの対策について検討を進める考えを示唆した。
詳しくは、以下のとおり。
[永井良三部会長(自治医科大学学長)]
(前略) それでは、議題に入ります。
最初に、「医師養成課程を通じた偏在対策」について、事務局から説明をお願いいたします。
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[厚労省医政局医事課・佐々木健課長]
はい、医事課長でございます。「資料1」(医師養成課程を通じた偏在対策について)をお願いいたします。
「医師養成課程を通じた偏在対策について」でございます。
2ページ目でございます。右下に「1」と書いてあるページでございますが、
これは、「医師養成課程を通じた医師偏在対策の今後のスケジュール」というものを示したものでございます。
こちらが今、さまざま医師の養成課程、入学時点、医学部教育、臨床研修、専門研修、開業時、含めまして、さまざまな時点での医師偏在(対策)というものの取組を進めておるところでございまして、
実は、先般の医療部会におきましても、例えば、「専門研修とか、そういった一部の取組で偏在対策を進めるというようなことは考えてないか」というご指摘もありましたが、
実はこのような全体的な状況で、今、進めているところでございます。
で、スケジュールといたしましては、全体的にはこの2018年度から進めていっておりますけれども、ここにお示しさせていただきましたとおり、2019年度、20年度、22年度に向けまして、着々と進めていくと、こんなような流れになっています。
これを、全体を通しまして医師偏在対策を進めていくと、このような状況でございます。
個々の状況につきましてもお示ししますが、次のページをお願いいたします。
次のページがですね、個々の施策。さまざまな、今お示しした医師偏在対策に関しまして、どのような場で地域で議論をしていただき、そしてその対策の主たる、その実施主体がどこであるかというのをまとめたものでございます。
都道府県が実施するものも多ございますが、国のほうで厚生労働省、また医学部の定員に関するところでありますと文部科学省などとも連携しながら取組を進めていくというようなところでございます。
それから3ページ目でございますけれども、これはもともと、全体の、
今、1ページ目にお示ししたものの内容の根拠となっていますものが、平成30年の医療法、医師法の改正というものでございまして、
この中の取組を1個1個やっていってる、というところでございます。
で、4ページ目からが「地域枠の設置・拡充」でございます。
これは(医師養成課程の)「入学」の所でございますけれども、医師の定員は現在9,420人ということでございますが、
「地域枠」というものを活用しまして、その地域で働いていただく、その地域に従事していただく人の確保を進めていっているというのが、まず1つの対策でございます。
で、これに関しましては6ページ目でございますけれども、
令和2年度以降に関しまして、この将来必要な医師数というものを勘案しながら、個別にまた、各都道府県、それから大学が都道府県と相談しながら実際、どの程度の臨時定員等を使う必要があるかということについて、
2022年に向けまして、調整を、議論を進めているという状況でございます。
7ページ目でございますけれども、都道府県の要請権限でございますが、
これは都道府県と大学との関係で申しますと、この権限が、法律的な権限が今ございますけれども、ない時代からですね、個別に「地域枠」の設置などについては従来から関係性がございましたが、
これは法律を受けまして養成する権限を整理したものでございますので、必ずしもこれに該当しない場合もございまして、
大学と都道府県が、話し合いが付けば、「恒久定員の枠の中で地域枠を設ける」ということはできるわけでございますけれども、
基本的には、医師が少数の県で、少数の二次医療圏があるという所について、「地域枠」であったり「地元出身者枠」というものを要請できるというふうに整理をしております。
8ページ目からでございます。「シームレスな医師養成」ということでございまして、
今回、先ほど少しご紹介をしました「医療法・医師法の一部を改正する法律」の附則の中に、
大学の学生さんが5年目、6年目に行っている臨床実習を含めた医学教育の状況を勘案しまして、初期の臨床研修というものを含めて検討をするという規定が法律に入っているところでございます。
それを受けまして、10ページ目でございますけれども、現在、関係する分科会等で議論をしておりますのが、この図でございまして、
先ほど申し上げたとおり学生の中に、5年生、6年生がやっております臨床実習というものをより実践的なものにしていくというようなことの取組を進めていく中で、
医学生の、今、医学部で任意で行われております共用試験、「CBT」「OSCE」と言われているものにつきまして、活用することによって、さらなる臨床実習を充実させていくということについて、どう考えるかということにつきまして、今、議論をスタートしたところでございます。
これを踏まえまして、さらに卒業後の法定の臨床研修というものにつきましても見直しをしていくと、こういうような流れに今、なっているところでございまして、
また、この議論につきましても、適宜ですね、医療部会のほうにご報告をしながら、という形を考えているところでございます。
それから、「臨床研修制度を通じた偏在対策」、11ページからでございますけれども、
こちらのほうは、いわゆる初期研修、それから専門研修などを通じまして医師偏在対策を進めるという観点でございますけれども、
まずは、臨床研修制度というものの見直しが2020年度の研修より適用するということになっておるわけでございまして、
(中略)
研修病院の指導の在り方、それから地域の偏在を是正するために大都市圏の募集定員というのを圧縮していくとか、そういうものが盛り込まれているものでございます。
そして、その具体的な偏在対策として13ページからでございますけれども、
研修医総数を各県に按分して地理的な条件などを加味した上で都道府県の上限というものをつくっていたわけでございますけれども、
これに関して、人口分布による算出の限度とか地理的な条件というものを加味しまして、さらに地域的な格差というのを是正していくというものが織り込まれているというところでございます。
(中略)
16ページからは「新専門医制度を通じた偏在対策」でございますけれども、
これは、専門医の養成の中で、まずは各大都市圏とその他に関しまして、専攻医が都市部に集中しないような取組ということで進めてきたわけでございます。
この2020年度4月に向けましては、さらにそれに加えて「診療科別のシーリング」という概念を導入して、今、(日本)専門医機構のほうで検討し、今、各学会のほうでプログラムを作って、それを今、まとめていると、そういう段階でございまして、
そういう意味では、この専門医の段階でも地域偏在、それから診療科偏在(対策)という取組を進めていくと、こういうようなことを今やっているということでございます。
偏在対策としては、だいたい以上のところでございます。
(中略)
[永井良三部会長(自治医科大学学長)]
はい、ありがとうございます。それでは、ご質問、ご意見を頂きたいと思います。
(中略)
[山口育子委員(NPO法人ささえあい医療人権センターCOML理事長)]
医師の養成ということで、ご説明をいただいたわけですけれども、6ページを見ますと、
例えば、医師養成数ということで、臨時定員、かなり細かく見ていきながら、2021(令和3)年まで決まっていて、2022(令和4)年以降は今後検討するということが言われていたりとか、
あるいは、13ページにありますような募集定員の上限の見直しというようなことも言われている中で、
今日は全然、ご説明の中になかったのが、「海外で医師免許を取得して日本で医師に」ということで、(国家試験を)受けてくる方がですね、これ、数年前から毎年増えてきているという話を聞いていまして、
現在、1校分ぐらいになっていると。それはかなり、大学が1つできたのと同じぐらいの人数になって、これは調整が効かないと思うんですね。
たくさんの方が海外に出て、で、日本で例えば「海外で医師免許を取った人」という中に日本人がかなり多く含まれているということを聞いています。
そのことについて、こういう募集定員での上限とか、そういうことが定められないということからしますと、
何か国として、そのことに対しての対策ということを現在、お考えになっているのかどうかということをお聞かせいただきたいと思います。
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[永井良三部会長(自治医科大学学長)]
はい、事務局お願いいたします。
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[厚労省医政局医事課・佐々木健課長]
はい、医事課長でございます。
今のご指摘の、いわゆる外国の医学部を卒業して、国内で医師として活躍されると、そういうような仕組み、現在もございまして、ご指摘のとおり100名近い方になってきているという状況でございます。
従来はですね、ほぼ外国籍の方が日本で医療をされたいということで国家試験を受けるルートとして使われてきたのですが、
近年では、外国の医学部が日本人学生を募集して、それを卒業して日本の国家試験を受けるというような方が増えてきているという状況であります。
ご指摘のとおり、国内の医学部定員に関しましては、医師需給などの関係でいろいろ調整しながら定員について検討しているところでございますので、
まあ、ある一定程度の規模になってまいりましたので、まあ少し現状を含めまして議論をしていくというようなことが必要ではないかと思っているところでございまして、
また、関係する部会での審議の状況につきましては、必要に応じ、この医療部会にご報告したいと思っております。
(後略)