2020年度の診療報酬改定に向け、医療と介護の連携をテーマにした7月17日の中医協総会では、療養病床から介護医療院への移行が議論になった。診療側は「なぜ進まないのか」と理由をただし、支払側は「出だしが鈍いんじゃないか」と不満を表したが、厚労省保険局医療課の森光敬子課長は「順調に伸びてきている」と評価した。【新井裕充】
厚労省は同日の総会に「介護・障害福祉サービス等と医療との連携の在り方について」と題する118ページの資料を提示。その中で「地域包括ケアシステムの構築をさらに推進する観点から、医療と介護の連携に係る評価の在り方について、平成30年度診療報酬改定における対応等を踏まえ、どのように考えるか」との論点を挙げ、意見を求めた。
質疑で、支払側の宮近清文委員(経団連)が「(介護医療院の)開設数ゼロの都道府県もある」と地域差を指摘すると、今村聡委員(日本医師会副会長)がすかさず自治体の対応に言及。「介護保険料に影響することもあって非常に積極的でなく、手続きが非常に複雑というか面倒になっている」と厚労省の認識を尋ねた。支払側委員もこれに続き、「介護医療院の出だしについての感想は想定どおりなのか」とただした。
森光課長は、「感想というのはちょっと言いにくい」と回答を避けた上で「順調に伸びてきている」と評価。「転換の意向を持っている施設は結構あると聞いている」と今後の動きに期待を込めた。
質疑の模様は、以下のとおり。
[田辺国昭会長(東大大学院法学政治学研究科教授)]
(前略)議事のほうに入らさせていただきます。はじめに、「介護・障害福祉サービス等と医療との連携の在り方について」を議題といたします。
事務局より資料が提出されておりますので、事務局よりご説明のほうをお願いいたします。では医療課長、よろしくお願いいたします。
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[厚労省保険局医療課・森光敬子課長]
はい。それでは資料に基づきましてご説明をさせていただきます。資料「総-1」をご覧いただきたいと思います。
本日は、「介護・障害福祉サービス等と医療との連携の在り方について」というテーマで整理をさせていただいております。
2コマ目を見ていただければと思います。
「地域包括ケアシステムにおける医療の役割」という、その絵でございますけれども、前回7月10日に「地域づくり・まちづくりにおける医療の在り方」として、点線でくくった部分については議論をいただきました。
本日は、その実線で囲みました右側の部分について整理をいたしましたので、ご議論をお願いしたいというふうに思っております。
また本日、このテーマにつきましては3つの整理をさせていただいております。
1つは、
「地域包括ケアシステムの構築に向けた介護サービスとの連携について」
2つ目が
「精神疾患に係る施策・サービス等との連携について」
3つ目が
「障害児・者に係る施策・サービス等との連携について」
この3つにつきまして、整理をさせていただいております。
4コマ目は飛ばしまして、5コマ目から説明をさせていただきます。
まず、「医療と介護の連携と地域包括ケアシステムについて」ということでございますが、この「地域包括ケアシステム」というものにつきましては、中ほどの所に、
「地域で暮らしていくために必要な様々な生活支援サービスや住まいが、家族介護者を支援しつつ、本人の意向と生活実態に合わせて切れ目なく継続的に提供されることも必要であり、地域ごとの医療・介護・予防・生活支援・住まいの継続的で包括的なネットワーク、すなわち地域包括ケアシステムづくりを推進していくことも求められている」
ということで、これに基づきまして、さまざまな施策がされているということでございます。
(中略)
12コマ目でございます。
「介護医療院の創設への対応」ということで、介護医療院の創設に当たりまして、診療報酬上、手当てすることにつきまして整理したものでございます。
現在の状況ということで、14コマ目を見ていただければと思います。
介護医療院の開設状況でございます。これは平成31年3月末時点での介護医療院開設。今、150施設、1万28療養床でございます。
で、(上段右側の円グラフ)「転換元の病床割合」を見ていただきますと、介護療養病床から転換したものが65.8%、老人保健施設から転換したものが18.3%、医療療養病床からの転換が15.8%ということになっております。
ただ、下にありますように、都道府県別の施設数というのはまだ、かなりまだ、まばらな状況というか、ばらついているといった状況でございます。
(中略)
50コマ目に、「地域包括ケアシステムの構築に向けた介護サービスとの連携について」ということで、論点を2つ挙げさせていただいております。
地域包括ケアシステムの構築をさらに推進する観点から、医療と介護の連携に係る評価の在り方につきまして、平成30年度診療報酬改定における対応等を踏まえて、どのように考えるのか。
2つ目が、在宅医療および訪問看護に係る評価の在り方について、平成30年度診療報酬改定における対応等を踏まえて、どのように考えるのか。
ということで、提示をさせていただいております。
(中略)
[田辺国昭会長(東大大学院法学政治学研究科教授)]
はい、どうもありがとうございました。
ただいまの説明につきまして、何かご質問等ございましたら、よろしくお願いいたします。
(中略)
では宮近委員、お願いいたします。
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[宮近清文委員(経団連社会保障委員会医療・介護改革部会部会長代理)]
介護医療院の開設状況に関する質問ですけれども、
14ページの資料によりますと、介護医療院の開設状況ですが、今年の3月時点で、北海道、山口、富山、岡山などは10施設前後、開設されているわけですけれども、
その一方で、開設数がゼロの都道府県もあります。
この、施設数がゼロの都道府県については、介護医療院への移行について、他の都道府県と異なる特別な事情とか、そういった何か理由はあるんでしょうか。
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[田辺国昭会長(東大大学院法学政治学研究科教授)]
では医療課長、答えられるかどうか分かりませんけど、お願いいたします。
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[厚労省保険局医療課・森光敬子課長]
はい。一応、各県の状況等のところまで、私ども把握しておりませんので、またあの、これは老人・・・、介護の担当のほうと少しお話を伺って、ご報告をさせていただきたいというふうに思います。
(中略)
[今村聡委員(日本医師会副会長)]
先ほど、宮近委員のご質問について、私もちょっと、ぜひ厚労省のほうで調べていただきたいと思っているのは、
これは事実関係については詳しくは分からないんですけれども、一部の先生から伺うと、「介護医療院に移り替えたい」と、「転換したい」という希望を持っておられても、
行政側の対応というのが、いわゆる介護保険料に影響するということもあって、非常に積極的でなくて、手続きが非常に複雑というか面倒になっている。
「受け付けをしてから認めていただくまで、ものすごい時間がかかってる」とかって、そういうようなお話もちょっと、どの程度、事実かは分からないんですけど、そういう話も聞きます。
従って、これ、結果として移行したのがこれだけですと。
この医療機関が、そういう意向を全く持っていないのかというと、実はそうではないという話も聞いているので、
どれだけ転換したいと思ってるかっていうような、そういう意向についても併せて聞いていただければと。
そして、なぜそれが進まないのかというところについても、もし分かれば教えていただきたいというところです。
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[田辺国昭会長(東大大学院法学政治学研究科教授)]
ありがとうございました。ほか、いかがでございましょう。
では幸野委員、お願いいたします。
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[幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)]
介護医療院の話になりましたので感想を聞きたいんですけど。
30年に医療(療養)病棟、それから(介護)療養病棟の転換先、受け入れ先として介護医療院ができたわけなんですが、この150(施設)という出だしをどう評価されてるのかっていうのと、
あと、介護医療院については、1年間、これ移行すると、「移行定着支援加算」というのが取られるというふうなインセンティブまで付けられてるわけなんですが、なかなかこれ、出だしが鈍いんじゃないかというのが1つの感想でして。
もう1つは、(療養病棟入院基本料)25対1が前回改定で廃止になって、経過措置が1・2、看護配置を満たさないとか、患者の割合を満たさない方については経過措置が取られたわけなんですけど。
まずは、この経過措置が取られている所から介護医療院を選択されるのかなあというふうに、われわれ、感じてたんですが、
こういった経過措置を取られてる所が介護医療院にいくというふうな想定をされてるのか。そのへんについて、つかんでいらっしゃるんであればお教えいただきたいのと。
要望としては、やはりこの経過措置というのは、今まで何回も何回も延長されるというふうなことがなされてきましたので、この25対1の経過措置については次回改定で全て解消できるように、診療報酬上の対応をしていくべきだというふうに思います。
まずは、この介護医療院の出だしについての感想といいますか、想定どおりなのか、思ったよりいかなかったのか、あとは移行措置の中にある方がどのような意向を持たれているのか、分かればお教えいただきたいと思います。
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[田辺国昭会長(東大大学院法学政治学研究科教授)]
では医療課長、お願いいたします。
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[厚労省保険局医療課・森光敬子課長]
はい。ええと、感想というのはちょっと言いにくいのであれですけれども、
基本的には、始まりましてから、この伸びのほうを見ていただきますと、14ページの伸びを見ていただきますと、順調に伸びてきているというところはあろうかと思います。
また、先ほどちょっと今村先生からお話がありましたけども、詳しい詳細は、また調べてご提供させていただきたいというふうに思いますけれども、
転換の意向を持ってらっしゃる施設というのは結構あるというふうに聞いております。
ただ、先ほど言いました経過措置のところかと思いますけれども、それにつきましては、検証調査のほうで今、調査をしております。
また、前回の30年の入院の分科会のほうで提出をさせていただきました経過措置対象施設の意向というのも伺っておりまして、一定の割合、移行したいという希望があるというところも伺っておるところでございますので、
また、今年度の検証調査も含めてですね、情報として提供させていただきたいというふうに思っております。
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[田辺国昭会長(東大大学院法学政治学研究科教授)]
よろしゅうございますか。では松本委員、お願いいたします。
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[松本吉郎委員(日本医師会常任理事)]
(前略) 今、介護医療院への転換のことで話がありましたけど、やはり医療病床でなければ、やっぱり受けられない、そういう方々もやはり一定数まだいるということは認識すべきだろうというふうには思います。
(後略)