「妊娠したら医療費を無料に」 妊婦加算が社保審で初めて議論に


20190612医療保険部会

診療側 松原謙二委員(日本医師会副会長)

 妊産婦の方が診察に来られたときに、内科医はものすごく緊張します。というのは、最終月経が遅れて2週間ぐらいのところで、ややこしい薬を出すと、かつてのサリドマイド児のような子どもができる可能性があるわけです。

 薬に書いてあるのは、動物実験で「これでおかしなことになりますよ」というのが動物実験で報告されているっていうのがある場合と、あとは、ほとんどの薬は有用性が、その、投薬することによって、有用性が、妊娠に対する害に対して上回る場合に、医師が判断して投薬しなさいって書いてあります。

 どういうことかと言うと、全て医者の責任と判断で、「何かあったらあなたの責任です」ということが書いてあるわけです。

 ですから、われわれは妊産婦の方が来て、風邪薬を出すときに、特に妊娠初期の時に、ものすごく問診して、最終月経がいつなのかということも確認しながら、中には、どう投薬しても、そういった奇形が出ないような薬も実際にあります。

 で、そういった薬を選んで出すわけですので、その方のいろいろな既往歴を聞いたりして確かに時間が掛かるので、妊産婦の加算が付くというのは一時的には私たちは理解できたのですが、

 これは、言うと眼科の先生に怒られますけど、コンタクトレンズを付けに(行って)診断して(もらって)、なんでこれ(妊婦加算)が取られるんだというのは、私たちはおんなじことを思います。

 簡単に言えば、投薬があって、その投薬が妊娠に対して何か影響があるときに対して加算をするんだったらまだよかったのかなと思います。

 しかし、実際に社会の中で、妊娠して診てもらったら高くなるというのは、これはやはり理不尽であります。本当は、今、国が、子どもが少なくて困っているわけですから、妊娠したら、その医療費を無料にするとか、そういった大胆な政策をとっていただけることを私たちは希望しますし、それをやった上で加算を付けるべきだったなと、今になってみると思うところであります。

 簡単に言いますと、この妊産婦の方を診るのは恐らく、内科医はきちんと診るでしょうけれども、そうでない科の先生たちはものすごい大変だと思います。

 そういったことから、「自分は診ない」とか、あるいは「産婦人科に行ってみなさい」ということをおっしゃる先生はいます。そうすると産婦人科の先生は出産だけじゃなくて、風邪ひきまで診なきゃいけなくなると大変なので、そういうことのないように何か国家的に考えるべきだと思っています。

 以上です。

.

座 長 遠藤久夫部会長(国立社会保障・人口問題研究所所長)

 ありがとうございました。ほかに何か、ございますか。
 はい、池端委員、どうぞ。

.

診療側 池端幸彦委員(日本慢性期医療協会副会長)

 はい、ありがとうございます。

 あの、まあ、松原委員、(松原)先生からもお話があったように、私もこの件に関しては、

 でも、逆に言うと、このことが問題になって、こういう検討会ができて、このことに関していろいろな体制がまた必要だよね、ということが議論になったことは非常に良かったことかなと思っています。

 で、ただ、ちょっと私、1つ疑問に思ったのは、これが出てきたものが、この加算を取ることによって、自己負担、妊産婦の方に自己負担が増えることに対して、「これはけしからん」ということで、これはだめだという議論からスタートした。

 これは保険制度そのものに対する自己負担のあり方という議論になってしまうので、これは、本当は、私はスタートは違っていたんじゃないかと思うので、これが、もしそれがまかり通ってしまって、これが全て、こういうことになってくる。

 じゃあ、小児の加算はどうだ、認知症の加算はどうだ、ということに対する、自己負担はどうなっているの、という話になってしまうので、

 これはちょっと議論が違うということは認識しながら、このことに対して、今後も検討していただければと思っています。

 以上です。

.

座 長 遠藤久夫部会長(国立社会保障・人口問題研究所所長)

 どうもありがとうございます。
 ほかに何かございますか。はい、それでは横尾委員、どうぞ。

.

自治体 横尾俊彦委員(全国後期高齢者医療広域連合協議会会長、多久市長)

 妊産婦、直接の意見ではないんですけれども、妊産婦、すなわち赤ちゃんが生まれるわけですね。出産後、出産した赤ちゃんの状況がいろいろその後の成長に影響があるっていう論があることを聞いたことがあります。

 例えば、いわゆるカンガルーケアのことですとか、体温のことですとか、あるいは、それから、どれくらいの時間の間に母乳を飲んだかとかいう、いろんなことがあるようですけど、

 たぶん、これまでの調査はないと思いますけれども、できるならば、そういうのも、調査が可能ならば調査を取っていただいて、個人を識別する必要は全くありませんので、ビッグデータとしても構いませんので、
 
 どのようなケアが本当に必要なのか、どのようなケアだったら要注意なのかということを今後、科学的なエビデンスデータとして持っておくことは長い目で見て、大切な赤ちゃんたち、未来を担う人材となる子どもたちをですね、生まれた時から健やかに成長してもらうためにも必要なことですので、

 そういったことも国として、どこかで考えていただいて、「いや、わが国はそういうデータはありません」で、ずーっと行くのはですね、今後非常にもったいない話だなあと思います。

 今、ご発言があったように医師会の先生方や、この分野に関わる、周産期に関わるいろんな先生方のさまざまな見解もありましょうし、また、世界的ないろんな研究も、開発も行われたりしています。

 そういった見解も踏まえながら、ぜひ、必要な調査ということはですね、国としてもどこかで考えていただくことが今後重要かと思ってます。

 意見です。

.

座 長 遠藤久夫部会長(国立社会保障・人口問題研究所所長)

 ありがとうございました。
 はい、安藤委員、どうぞ。

.

支払側 安藤伸樹委員(全国健康保険協会理事長)

 はい、ありがとうございます。

 妊娠してる方、妊産婦に対して、その方が医療を受けるときに、当然ながら、その「妊娠してる」ということを考慮に入れて診療していただくということは非常に大事なことであるというふうに思います。

 そして、そこに、その診療に対して加算を付けるということについても、これはあの、何ら問題はないかなというふうに思っておりますけれども、残念ながら、今回、妊婦加算ということについて、「本人負担はまかりならん」というようなことになってしまいましたので、

 今後、これ、当然必要だろうというふうになってきたときに、「じゃあ、その費用負担をどなたがするのか」という議論になると思います。

 それで、その議論になったときに、あの、大変申し訳ないんですけれども、われわれ保険者に対して影響がないような形で検討していただければなと。

 (樽見英樹保険局長が苦笑)

 あの、大変申し訳ないんですが、

 (委員ら、笑い)

 そういうご意見を申し上げさせていただきたいと思います。

.

座 長 遠藤久夫部会長(国立社会保障・人口問題研究所所長)

 はい、ありがとうございました。
 はい、それでは森委員、どうぞ。

.

診療側 森昌平委員(日本薬剤師会副会長)

 はい、ありがとうございます。
 
 先ほど、松原(謙二)委員(日本医師会副会長)のほうから(妊産婦の診察は緊張するとの発言が)ありましたけど、薬剤師のほうもですね、妊婦の場合、特にですね、注意ある対応をしています。

 そうした中、妊娠の月数によっても、やっぱり使ってはいけないお薬もありますので、そういうものを添付文書だけじゃなくてですね、さまざまな書籍を見て、注意をしながら処方確認をしています。

 今、横尾委員のほうから(提案が)ありましたけど、国のほうでもレセプトデータが整備をされていると思います。医師のほうもですね、治療上の有益性が上回ったときに、あえて投与をするというものもあると思います。

 そういう人が最終的にどうなったのかというデータもですね、きちっと蓄積をしていくとですね、

 妊娠中、最近、使えるようになった薬も出てきましたので、より、こう、安心して、安全に妊婦のために使えるんじゃないかと思いますので、そういう体制整備も必要じゃないかというふうに思います。

 以上です。

.

座 長 遠藤久夫部会長(国立社会保障・人口問題研究所所長)

 はい、どうもありがとうございます。
 だいたい、よろしゅうございますか。

 はい、ありがとうございます。
 それでは、この件については、これぐらいにいたしまして、次の議題、「第3期全国医療費適正化計画について」、事務局から資料の説明をお願いします。

 (後略)

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